僕らはカケラでできている




[笑う門には](1/1)
 短文/そう決めた、という話





笑う門には
短文/そう決めた、という話





「こっち見て! ほら、にってして!」
きっと初めは求められた。

「なに笑ってんのよ」
クラスメートのあの子には、嫌がられた。

「はい、笑ってばっかりいないで」
邪魔なときもあるらしいし。

「こんなときでも、笑ってられるのってすごいね」
ある日には尊敬しちゃわれた。

「……よかった……」
誰かの心を、ほんの少しだけ温めて。

「あなたのいいところは、その笑顔だろう?」
泣いてた日には、そう言われる。

笑顔は福を呼ぶらしい。
私は半分それを信じない。
他人が人に求めているのは笑顔そのものではないからだ。

笑うだけではなくて、苦しみを知ることを。
苦難を乗り越えた後でそれでも笑うことを。

それだけのドラマを求めている。
なんのために? それは人それぞれに。

勝手、そして傲慢だ。
ただ笑うだけじゃ、駄目だなんて。



だから私はただ笑ってやろうと思う。

悪の使いのように。

勝利の旗を持つ強者のように。

人の手をかりなければ生きられない、小さな子のように。


そして泣くのだ。

誰のためでもない。

私のために。




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