私の可愛い彼氏
[男前女子×乙女男子](1/8)

うちの職場は毎日戦争である。
我が会社、「王林社」はファッション誌、タウン誌、アイドル雑誌まで幅広く発行している。
誰もが知ってる企業でもないが、雑誌名はそこそこ知られる存在である。


「椎名!!またお前は!誤字多すぎるぞ!
もっかい小学生からやりなおしてこい!!」
編集長の怒号が唾とともに降ってくる。
体をくの字に曲げて、謝罪するのは
わたしの日常の光景だ。
学生の頃から、国語が苦手だったせいか 記事の校正の段階でクレームが多い。
それでも、クビにならないのは文章のセンスが認められているからだ。
おかげで、多少のクレームが入ってもびくともしない。
自分の記事に自身を持ってるからだ。

私、椎名理苑(しいなりおん)は地元のタウン誌のグルメ等を担当している。
ここに配属されて、5キロ太ってしまった。
取材先で美味しいものを食べて、飲んで記事を書く。
書きながら、いい記事を書くイメトレのため、書きながらまた何かを口にする。
肥える悪循環だ。
これをわたしは5年も続けてきた。

休みの日は、今まで取材に行って気に入った店に足繁く通っている。
私の収入半分は血となり肉となり、脂肪になっていると言っても過言ではない。

休日に行く店は その時の気分で変わるが
今、一番のお気に入りは 『Bonbons fleur 』という洋菓子店。
フランスに修行に行ったというパテシエが一人で作っているケーキは
まるで花びらを散らしたかのような、花をモチーフとした繊細で可愛らしいケーキだ。
そして、甘すぎず素材の味を生かしていて
あっさりとしてるのでいくらでも食べられる。
私はいつも4つは平らげるが、翌日にお腹がもたれたりはしたことがない。

今日も私は Bonbons fleur の扉をくぐった。






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