ハイヒール
[幼い頃](1/1)
泣きながらごめんね、ごめんねと繰り返す男の目を少女はじっと見ていた。
やがて男は少女を抱きしめ、頭を撫でながら最後のごめんねを言うと戸を開けた。
その音がどうもいつもより残酷な気がして、少女もそれを追いかけるようにして戸を開けた。
青空の色と夕焼けの赤が混ざるような時刻であった。
小さな身体で少女は懸命に走るがどうも追いつかない。
少女は道端の石を思いきり蹴ったが、何せ三つにも満たない少女の細い足だ。男の視界には届かなかった。
コロコロという音が少女の胸の内の不安を、より一層掻き立てただけであった。
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