妖魔の時間

[恋慕など……](1/20)

岩裂side



ミーン、ミーンと蝉が鳴る。



「あちー…………」



瑠衣がこの世界に来てから数ヶ月が経ち 、夏がきた。



先の世の夏になれている瑠衣には辛そうだ。



そして蝉の声でイライラが増しているようにも見える。



【るーい!!って…………イライラしてます?】



…………根裂。




決して届くことのない声を、出そうとしてやめる。



「してる。暑すぎてしてる」



【あ〜、この時代は扇風機がないですもんね】



根裂は苦笑いしながら瑠衣の隣に座る。



【あれ?白虎は?】



瑠衣が指を指した場所には木の影で気持ちよさそうに寝る猫姿の白虎が居た。



【寝てるなら起こさない方が良いですね】



無理やり起こしたやつが何を言うか。



「うん」



【それより瑠衣は何をしているんですか?】



《この時代に来た時に一緒に持ってきた荷物の中に入っていた倫理の教科書で神様を調べようかなって》



【へぇー、分からない人が居たら僕に教えてください。教えますので】



そう言う根裂に「うん」と返事し て教科書に目線を移す。



根裂に気づかれないように天御中主神の力を借りた。



だけど、こんなにそばにいても気づかないものかと、少し寂しくもあった。



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