地の果ての庭
第一部 始まり。
「ねぇ、世界を壊しに行かない?」
……はぁ?
今色々なことが立て込んでてただでさえ疲れてるのに……。
ああ、そっか。疲れてるから幻聴が聞こえてるんだね。
「現実だけどね」
そう言って向かいに座っている男は、アイスコーヒーにシロップを入れた。これで3つ目。果たして彼の味覚は正常に機能しているのだろうか。
というより、今の何故あたしの考えていることを言い当てたかのような発言はなんだ。
「……あの、もう一度さっきの言葉言っていただけます?」
「一緒に世界を壊しに行かない?」
「嫌です」
「つれないね」
いやいや、当たり前だろう。
何故あたし、リア・オーラスはこんな目に遭っているのだろうか。
始まりは昨日、9月20日だった。
♦♦♦
「ハッピーバースデー、リア!」
昨日はあたしの誕生日だった。それは同時に、旅立ちの日でもあることを意味している。
というのも、あたしの村では16歳になったら、一人で村を出て旅に出なくてはならない、という一風変わった慣習があるのだった。そして3年間は村に帰ってこられない。
その日までに色々なことを学んでから、16歳の誕生日を迎えたら家族を置いて、一人村を出るのだ。
旅とはいえども、何も本当に旅をしなければならないのではなく、実質、村から出ればそれだけでいい。
だから、大抵の人は隣町に下宿して一人暮らしを学ぶ。旅に出たら、学校はその下宿先の高等学校に入学する。
あたしもそうする予定だった。
というか今、してはいるのだが……突然、有り得ないことが起きてしまったのだ。
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