オヤマの大将

○鬼山高校(1/12)










私立鬼山男子高校(シリツオヤマダンシコウコウ)。

創立家系の神崎剛現理事長はもちろん、校長をはじめとした教員(用務員の爺さんも)のすべてが族上がりというとんでもない高校だ。

入学してくる生徒はここで頂点取ったらァ≠ニいう血の気の多い本物の馬鹿しかおらず、中学までヤンチャしていたなりきりヤンキーは必死に勉強して他の高校へと足を進めた。

つまり、鬼山は県下1の不良どもの巣窟。

…ということを

俺、佐藤幸太はいま初めて知った。

嘲笑混じりの説明を受けたのだ。

転入初日、挨拶に訪れている理事長室で。

高級そうな椅子に踏ん反り返り机に脚をのせて煙草の煙を吹かす神崎理事長≠ゥら。

「なーに、んなシケた顔するな。本当に強い奴らは上しかみてねぇから、雑魚のお前に手を出だすことはないだろうよ。まぁ、弱い者イジメするクソガキもいるにはいるがな」

豪快に笑う理事長にますます不安が煽られる。

今すぐ退学したいというのが本音だが、今の時期転入生を受け入れてくれる高校は他にない。

あぁ…もう泣きそうだ。

「でも、そうだな。お前みたいな奴がここで生き残るには上の奴らに取り入るといい」

「…その人達も不良なんですよね」

「は?当たり前だろ。ここはゴミの掃き溜めだからな。間違えて捨てられたのはお前だけだ」

言ってガハハと笑う理事長。

さっきから不良校ジョークを連発しているのだろうが、俺にはまっったく笑えない。

「まぁ、俺も鬼じゃねぇ。寮の部屋はなるべく温厚な奴を同室にしてある」

「は」

「せーぜー仲良くするこったな。おら、説明は以上だ。仕事があるからさっさと出て行け」

仕事といいながらAVをつける理事長は教育委員会に訴えても許されるレベルに酷いと思う。

っていうか、さっき理事長はなんと言った?聞き間違いじゃなければ、りょ、寮の同室者?

全寮制だとは聞いていたが…

この天下の不良校で俺みたいなバンビと名も知らないヤンキーとが相部屋になるのか?

「佐藤、話はすんだか」

「あ…はい」

「教室行くぞ」

「はい」

この学校に来て初めて喋った担任の村井先生はどの学校にも必ず一人はいる厳つい体育教師っていうイメージだった。

しかし、廊下を通り過ぎる教師は村井先生と似た感じの厳つい人しかいない。

稀に優男風の教師もいたが

「廊下は走っちゃ駄目ですよ」

なんて穏やかに言いながら、体格の良いヤンキー生徒を数メートル先まで蹴り飛ばしていた。

「あいつが1番やばいからな。気をつけろ」

「あっ…はい」

吹っ飛んだヤンキーをみていた俺に、隣を歩いていた村井先生がコッソリ教えてくれる。

まだ他の人間に関わっていないけれど、村井先生が1番まともかもしれない。





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