4年の星
○始動 1 / 5
「宅急便でーす!」
「はい」
「こんにちは!山下さんのお宅でよろしいでしょうか?ここにサインか印鑑をお願いします!」
「これで良いですか」
「はい!…どうもありがとうございました!」
指示された箇所に女の印鑑を押せば、宅配員のおじさんは忙しそうに走り去った。
届いたのは茶色い小包。
中には女が普段仕事で使っているパソコンで取り寄せた薬品≠ェ入っているはずだ。
(これで準備は整った)
壁掛けのカレンダーを指でなぞり深く息を吐く。
行動を起こすには絶好のタイミング。
ここまで来たらもう後にはひけない。
ひかない。
なにがあっても先に進むだけ。たとえ、進む先が破滅や絶望であったとしても。
【始動】
プルルルルル プルルルルル プルルルッ
『もしもし』
「もしもし、俺」
『わかってるよ。つーか、蒼太から俺にかけてくるって珍しいよな。なんかあった?』
「うん。今夜のことなんだけど、ちょっと都合悪くて遊べなくなった。ごめん」
『えっ、マジで。用事?』
「うん、母さんから出掛けようって誘われた。今日は無理だけど、今度ちゃんと埋め合わせするから」
『…そーか、わかった!埋め合わせ絶対だぞ!』
「うん、ごめん」
本当にごめん。
沢山、嘘ついて。
『じゃあ、またな』
「じゃあ」
最後の電話で唯一の友人を裏切った。
最初から会う気がなかったことも、これから利用することも、お前は知らないままでいて。
俺は狡い。
あの女と同じ、最低だから。
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