4年の星二人 1 / 6








「…あー、マジか」


午前6時30分。

いつもの時間に目が覚めた。

目が覚めたということは、結局あのあと窓も開け放したままで眠りについていたらしい。

妙に身体がダルいのはそのせいだろう。

顔は火照るし、頭はズクズクと痛む。本格的に風邪を引いてしまったかもしれない。


(バカじゃん、俺。完全に自業自得だ)


冬の夜に窓を開けたまま寝るなんて。

窓くらい寝る前に閉めておけば良かった。と後悔しかけたがすぐにそれは無理だと思い直す。

そもそも寝るつもりがなかったんだ。

あの悪夢を見たあとは毎度必ず起きていたし今回だって例外じゃなかった。

起きていよう。

そう考えていたはずだ。

それがいつの間にか朝に変わっていて太陽の光に起こされた。カーテンも挟まない直接的な光が痛いくらいに容赦なく瞼の表面を刺激する。


何度か瞬き眩しさに目を慣らした。

今日も意味の無い1日が始まる。




【二人】




「あら、おはよう。蒼太」

「にーちゃんおはよー」

「おはよ」


学校に行く支度を済ませてから一階に降りると、リビングには母さんと晴斗の2人がいた。

この時間はいつもこう。

祖父母はまだ寝室で寝ていて、父さんはもうすでに仕事に出ているので顔を合わせていない。

家族のために朝早くから仕事にでかける男。

その姿を不憫に思ったあの日から、俺は起床時間を父さんが家を出たあとにずらしている。


「蒼太、今日は朝ご飯食べるでしょ?」

「ごめん、寝坊したからいらない。今日も朝から補修があって急がないとまずいんだ」

「えー!?せっかく俺が作ったのに!」


いつものセリフで朝食を断った直後、晴斗がテーブルにバンと両手をついて立ち上がった。

不満そうにとがらせた唇は今なんて言った?


「お前が作ったの?」

「うん、そう。昨日のことちょっと反省して…。つっても、パン焼いただけだけど」

「わかった。じゃあ、パンだけ貰う」

「…!うん!」


いらないと言った手前、わざと仕方なさそうに言ってパンを取れば晴斗は嬉しそうに笑った。

まっすぐで、素直で、正直で。

自慢の弟だって思う。


「もう行くの?」

「行くよ。時間もあまりないし」

「そう。じゃあ、はい。お弁当。今日は蒼太の好きな唐揚げいれておいたからね」

「…ありがとう」


弁当を受け取り笑みを返す。

あんた、変わらないな。

俺が小学生の頃から何も変わらない。毎日、毎朝、無駄に手の込んだ弁当を作ってくれる。

昔はそれが嬉しかった。

友人は皆羨ましがった。

母さんの手作り弁当は俺の誇りだった。

…こうしてみると変わってしまった≠フはアンタじゃなくて俺のほうみたいだな。









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