アシンメトリー
[未来](1/28)

未来




「誕生日おめでとー」


午前零時を三分過ぎた時。私のスマホを一番に鳴らしたのは、黒木さんでも内海さんでもなく、新太さんだった。


「誕生日、どうして知ってるの?」


まさか黒木さんが言うわけないし。


「タイムラインで流れてきた」


電話の向こうの声は、わりと元気に聞こえる。


「それでわざわざかけてきてくれたんだ?」


「自惚れないでくんね。光さんとお祝いしてる最中、邪魔しようと思ったの」


いつもと変わらない憎まれ口にも、ホッとした。


「私もう寝るとこだよ。あの人朝は仕事で早いの、新太さんだって知ってるじゃん。今日は平日だから、会うのは週末」


それも、真奈美ちゃんとご対面の食事会だから憂鬱極まりない。


「えー、平日でも普通誕生日は別だろ?桜子、もう飽きられちゃったんじゃないの」


本当にお祝いの電話なのか。


「大切なルームメイトから奪った女に二週間やそこらで飽きたんなら、黒木さんも相当なクズだね」


「あんたも言うようになったね。でもせめて電話くらいあってもいいだろ」


「今新太さんとしてますけど」


「ぶは、そっか、ざまぁ。光さんより先にお祝いの電話してやった」


これがお祝いの電話だとは、私は一切認めない。


「てゆうか、黒木さんと一緒じゃないってことは新太さん外にいるの?」


「光さんのマンション出たんだ、先週」



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