アシンメトリー
[西陽](1/63)

西陽




「どうぞ、もう大丈夫です」


「うん」


言われた通り大人しく後ろを向いていた黒木さんが振り返る。


っ!」


途端に、声にならない声を上げて絶句した。


口を押さえて一瞬顔を背けたけど、すぐまた視線を戻す。そのまま私のあざに釘付けになった。


なにも言わないけど、めちゃくちゃ動揺してるのが分かる。


なんだこの反応。真也の比じゃないくらいのオーバーリアクションじゃないか?大人だから、自分にもケロイドがあるから、っていかにも大丈夫そうなこと言ってたくせに。


やっぱり思ったより気味が悪かったのか。覚悟はしてたけどショックだな


もう見せるのをやめようかと思ったけど、黒木さんがあんまり凝視してるから動けなかった。例え気持ち悪くても、この人なりにあざがどういうものか判断しようとしてるんだろう


「すみませんなんか」


軽く惨めな気持ちになって謝ると、黒木さんはやっと私の顔に視線を移した。


「ちょっと刺激が強過ぎましたよね」


当たり前でしょ。すごいびっくりしたよ」


そんな、遠慮なく本音を言うことないじゃないか。


「まさかこんな全部おっぱい見せると思わなかったし」


へ?


「なにが?だって黒木さんが見せろって」


てゆうか、この人今おっぱいって言った?黒木さんにあまりにも似合わない単語なんですけど。


「他は隠してあざだけちょこっと見せるんだと思ったんだよ」


え、えええー!その動揺の正体はそこなの?



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