ホテルのドアを開けたら先生がいました。
11. 赤(1/12)
見上げれば運賃表。
乗り換えポイントまでの金額を確認し
自動券売機に小銭を放り込んだ。
「わかった。今までありがと。」
たくさん思うことはあったわけで。
しかしどれ一つとして言葉にはならなかった。
わたしは俯いて、白いカップについた赤い口紅を親指で拭うことしかできなかった。
思うより驚き、というものは少なかったし
苑香先生の態度とか、ピースがはまったように分かってすっきりしたぐらいだった。
先生のことが好きになって
先生のことが忘れられなくて
ここまで追いかけてきたけれど
追いかけてきた理由はきっと
好きで好きで、もう一度だきしめてほしかったから、
じゃなくて
ただ、分からないことを知りたかっただけなのかもしれない。
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