The 1GAME of Dreams
★[リング](1/10)
「わたしもね聞いた話なんじゃが、あるところに、ちょうどおまえさんぐらいの子供がおった」


おったってことは過去形だな。

異様な緊張感に包まれた六畳の空間は、雨の音も聞こえずまるで外界から切り離されている。

そんな、訳の分からない空間にいきなり連れ込まれた僕自身が、あまり動揺していないから驚きだ。

「今からもう4年前かの、その子の両親が離婚してどっちも引き取らずに結局、一人暮らしをしていたとさ」

話をしているお婆さんの額から頬に汗が伝わるのが見える。

僕の体からも汗が止まらない。


「するとある日、その子は拾ったと言っておったが指輪をはめておったんじゃ」


指輪……ね、それがどうかしたのだろうか。


「暫くは誰も気にせずにおったらしいがの、急にその子がおかしくなり始めたのじゃ、

世界が滅ぶだの 大切な人が連れ去られただの、
なのにその子はずっと自分の部屋で寝てばっかりじゃったよ」


――何時の間にか、お婆さんの客観的な思考は抜け落ち、感情移入が激しくなる。

あくまでも聞いた話だろ……

「それから日に日にその子はおかしくなっていきおった、

自分の部屋をグチャグチャにして人様に迷惑をかけて、まるで気が狂うておるようじゃった、

しばらくしてその子は自殺をしおった、

そのときの指輪こそが昨日おまえさんと 一緒に来た友達に渡したものじゃよ……」


お婆さんはいつの間にか泣きながら話をしている。

話の前提と内容、お婆さんの口調と様子。

矛盾が生じているのは見え見えだ。

『その子』はお婆さんの息子。

そうすんなら話は通るが、なら何故僕に実話を隠し、さらに涙まで流して語る必要があるんだよ。


俯いているので顔はよく見えないが……

僕の汗が顎から太ももに一滴だけ落ちる。





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