あなたの温度
[12.砕](1/11)
12.進


「あーきー!起きてー!!」

九月も終わりに近づくある日、ヒロトが朝からあたしを起こしに来ていた。

「おはよーあれ?髪の色赤い?」

あたしは眠い目を擦りながら起き上がる。
ヒロトは髪を赤色に染めていた。

「なんか気合い入れたくてさ。いよいよ貯金も保存版しかなくなってきたからタクトさんのとこと、アキラ君のとこでバイトすることにした。保存版貯金はあるけど、貯めときたいし、やっぱり家賃分くらいは継続して稼ぎたくて二人に頼んだら快くオッケーくれた!」

ヒロトは嬉しそうにそう言った。
仕事を辞めてから、バイトを探しはしたが、ヒロトだという理由や、入れ始めたタトゥーが目立ち、バイトはことごとく不合格だったのだ。

それで貯金で生きていたのだが、将来の為の保存版貯金には手を出したくないと思っていたら、生活用貯金がなくなってきたらしい。

「タクトさんの店はバーテンだけどアキラさんとこは何やるの?」

制服に着替え、髪型を整えているあたしを、ヒロトは眺めながら答えた。

「アキラ君とこはモデル。」

「え?モデル?」

サラッとすごい事を言うので、あたしは驚いて聞き返す。

「そう経理とか募集してないか聞いたらそんな大層な仕事じゃねぇよって言われてさぁ。

そしたらタトゥーの方の店の宣伝でポスターとか、雑誌の広告とか今度やるつもりみてぇなんだけど、タクトさんと俺、あとアキラ君をモデルに使いたいって話になってるらしくて。

聞いたらモデル代結構くれるって言うし、やる!ってなってさ。
爆鬼薇歴代総長三人でモデルってやばくねぇ?」

ヒロトは若干興奮気味だ。

「歴代総長三人でってのもやばいけど三人揃ったら顔面偏差値いくつになるんだろう。」

あたしは整った三人の顔が並ぶのを思い浮かべ、見慣れているはずなのにドキドキして、それがモデルとしてとなるとすごいものが出来るな、と確信した。

「とりあえずその話に今日は行ってくる。帰ってくるの早いか遅いかも分かんねぇから、亜希の顔見ときたくて。話の後に墨の続き入れるかもしんないし。」

ヒロトは言いながらあたしのスマホをいじる。

カシャっと音がして、あれこれして渡されたら、待ち受け画面がたった今撮った赤髪のヒロトになっていた。

「もー。スマホ画面出る度びっくりするじゃん。」

「出る度俺にドキドキしとけよな。変えたら許さねぇぞ。」

ヒロトは悪びれることもなく、むしろドヤ顔で命令調に言ってきたので、あたしは笑う。

一緒に朝ご飯を食べ、ヒロトはアキラの店に行くべくバイクで走り去った。
あたしは自転車で、途中理沙と合流して学校に向かった。






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