あなたの温度
[9.怯](1/9)
目が覚めると、ヒロトがベッドにもたれて雑誌を読んでいた。
「いつ来たの?」
あたしの問いに、ヒロトは振り向く。
「…お前一日寝てたぞ。もう夕方五時。俺は二時くらいに来た。」
「え?もうそんな時間?ゴメン休み一日終わっちゃったね…起こしてくれて良かったのに。」
あたしは驚いて起き上がる。
そんなに眠っていたとは…さっき寝たばかりのような気がしていた。
ヒロトは雑誌を閉じて、起き上がったあたしの頭を撫でる。
「朝と違って穏やかに寝てたから寝かせといた。休みはまだ明日もあるしな…。」
「じゃあ、今日ヒロトのとこ泊まる…。」
「……うん。」
一瞬ヒロトは考えたが、頷く。
ヒロトが何を考えたのか、あたしは分かっていたが何も言わなかった。
あたしはお泊まりセットを抱えて、母さんにヒロトの所に泊まると伝えた。
「ヒロト君の誕生日ケーキ買ってあるから、持って行きなさい。ちゃんと亜希はチョコケーキ、ヒロト君はチーズケーキよ。」
母さんは、そう言って冷蔵庫からケーキを出してくれた。
「お…毎年ありがとー!」
ヒロトがお礼を言いながら受け取り、あたし達はヒロトの部屋に向かった。
「わーい、ケーキだ!」
あたしは浮かれて、ヒロトの部屋に着いて早々に箱を開ける。
「コーヒー淹れるから、待ってな。」
ヒロトがそう言って、コーヒーを淹れてくれる。
コーヒー好きのヒロトは豆から挽く。
部屋にコーヒーの良い香りが漂うと、あたしは何故だか心が落ち着く。
二人でケーキを食べ、コーヒーを飲み、その後夕飯の買い出しに出掛けた。
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