あなたの温度
[7.継](1/13)
7.継
結局あたしはそのまま起き上がり、ベッドに腰掛けてノートを見ていた。
塚田の見解やあたしとの会話、ナギサとの会話が書かれているのだが…
ヒロトに伝える言葉だけ抜いてあった。
塚田はきちんと約束を果たすのだろう。
ナギサが消えてしまったらヒロトに伝えてくれという伝言を。
ヒロトは相当熟睡していたらしく、 しばらくして塚田と共に戻ってきたのだか、寝起きのテンションであたしにしがみついてきた。
「亜希ぃ……。」
「ヒロト、病院だし…ちょっと…先生見てるって…。」
あたしはそう言いながら、ヒロトを引き離そうとするのだが、ヒロトはビクともしない。
「ヒロト君も亜希さんの前では本当にただの男の子だねぇ…私達大人でも誰もが知る爆鬼薇の三代目総長…その人なのにね。」
塚田はとても楽しそうに言いながら、薬の処方箋を出してくれる。
「イメージ崩れちゃうから困りますよね…。」
あたしが苦笑しながら答えると、
「血も涙もない恐ろしいイメージ?」
と、ヒロトが顔を上げてあたしを見やる。
あんまり本意ではないイメージらしいので、不服そうだ。
前に産婦人科の内藤に言われたイメージだ。
「ちょっと前のヒロトはそう言われてもおかしくなかったでしょ…今でもチームではクールビューティーヒロトさんで通してるし…あたしの前の姿見せた事ないじゃん。」
あたしがわざとらしく嫌味っぽく言うと、ヒロトは不貞腐れ…ツボにはまったらしく爆笑した。
「うるせぇな…あーもう!クールビューティーヒロトさんてなんだよ…あははは!マジでなんだよそれ…。」
「二人とも初めて見た頃の面影ないくらいに、心が元気だ…私は嬉しいよ。」
あたし達のやり取りを見ていた塚田が、そう言って処方箋を出し終わってノートのまとめをし、あたしに手渡した。
「…亜希さん、ステップアップで通院週一にしてみよう。毎週中日の水曜日にどうかな?」
「え?週一?」
塚田の言葉にあたしは驚いて塚田を見る。
塚田はニコニコして、頷く。
「薬も減らしておいたから。ヒロト君は半月に一度で良さそうだね…明日診察の日だから明日また決めようか。」
「亜希、良かったな。俺も…二人共ちゃんと前に進んでいるんだな…嬉しいぜ。」
ヒロトはそう言って笑った。
あたし達は病院を後にし、家路へと向かった。
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