あなたの温度
[4.心](1/19)
4.心
真っ暗で雑音がひどくて、頭が割れそうで…
だんだんと雑音の中から声が近付いて…
どうして殺したの?
どうして産んでくれなかったの?
と、子どもの声がして……
視界がぐるぐる回り出して、ひどい吐き気に襲われる…
堕胎してから、あたしは時々そんな夢を見た。
飛び起きるようにして目を覚まし、全身汗だくで息は荒い…そしてひどく頭が痛くなる。
そんな目覚めの日は、とても学校など行ける状態じゃなく、あたしはベッドからほぼ離れられないで過ごした。
両親やヒロトには、ただの偏頭痛だと思う、と言って、大人しく頭痛薬を飲んで休んでいた。
「あんまり続くようなら病院行かなきゃいけないわよ?」
そう言う母さんに、あたしは頭痛くらいで大袈裟だよ、とその時はまだ、笑って返していた。
何日かに一度、一日がやけに一瞬に感じる日があった。
そんな時は、一日何をしていたか記憶が曖昧だった。そのうち、記憶の抜けを感じることが増えた。
また、やけに気分が上がり下がりして、落ち込む日は死んでしまいたい程にとことん気分が下がり、良い時は今なら何でも出来そうだと自信家になる位気分が上がった。
さすがにそんな日が幾日もあり、あたしはヒロトと両親に病院に連れて行かれた。
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