『テープ』
リ[面会](1/1)
拘置所
映画やドラマでよく見る面会室で俺と白馬は椅子に腰掛けている
ガラス張りの向こう側
誰もいない 空っぽの椅子
ガラスに写る自分が一瞬、他人に見えた
そして向こう側のドアから警備官2名に連れらた灰原のおっさんが入室する
灰原は俺や白馬に目も合わせず、空であった椅子に腰掛ける
椅子は灰原の重みも感じる事なく歪みの音も発しなかった
白馬、
「灰原さ」
「久しぶり佐田」
‥
‥‥
「ご無沙汰です」
ざまあみろ
そう思えない程、おっさんは疲れきっていた
「元気にしてるんか?」
「おかげさまで」
白馬、
「灰原さん、もう大丈夫ですよ。記録を隠滅した本人です」
「そおか‥」
「出れるんです」
「‥出れる‥か‥」
「?」
「佐田、深いことは聞かんで。どないしたんや?」
「はい、あのAVの編集スタッフのチーフの名前を教えて下さい」
黙って俯く灰原
「知りたいんです俺」
「‥‥お前、関わる気か?」
「お願い‥そこから出します!お願いします‥お願いします!チーフ!」
「‥‥出たって一緒のことや佐田」
「え?」
「あんな事が起こって‥テープ、証拠を棄てたとかいうハッキリしない理由で俺は犯人扱いや。検察にも丸め込まれる‥‥
TPE、会社は俺をここまで追い込んだんや。普通じゃあり得ない事が今現実に起きてる。冤罪として出れたとしても会社は世間の非難をビビって俺をどうする?」
「その時は会社もあんたに口封じで金で解決させようとするよ。ただそれだけのこと」
「TPEの女優は皆、生命保険に契約してる」
「え?」
「受取りは勿論、全部TPEの口座や。女優の歳の保険料の設定も全部、会社自身が行ってる」
「そこまで‥」
「女優は皆、ワケありの寄せ集めや。見ててみ、すぐに新しい人気AV女優が出てくるわ。TPE所属のな」
「あんたは」
「金儲けの組織は金で解決はしない。ダニも無数に集まれば無敵や」
「あんた、何でそこまで‥」
「以前、お前が入社する前、1人のTPEの女優が殺された」
「‥誰に?」
「金田って言ってな、お前と同じ撮影助手」
「カメアシ‥」
「お前に似ててな、暗くて、若いのに覇気もない奴」
うるさーい(棒読み)
「金田はその女優とデキていた」
しかもカネダウゼー(涙)
「俺は金田本人から彼女の相談をずっと受けていた、
家族、借金、仕事、多くの問題を彼女は抱えていたらしい。さっき話した事も金田から聞いた」
「それで、ある日、楽屋で血塗れの彼女が倒れていた。
そんな彼女を見おろすナイフを握りしめた金田もそこにいた」
「それで?」
「金田は捕まったよ。全く今と同じように俺は奴の面会に行った。
何故?と問いただしても奴は“彼女のため”と言うだけで」
「金田は今は?」
「自殺したよ」
「そうですか‥」
「繊細で気弱な奴でなあ、嫌いじゃなかった」
大抵の予想は着く
金田はやらされたんだ
TPEがそう仕向けた
彼女の家族や借金を餌にし、騙したに違いない
そして‥
“どうせ彼女が会社に殺されるのなら‥‥自分が”と
「お前を辞めさしたのも、金田に似てたからや、見てて‥‥たまらんかった‥‥」
「やめて下さい、過去程くだらないもんありませんよ」
「最近の奴は生きることに疲れてるように見えるんや。
高いハードルにつまづいただけで
“こんなはずじゃなかった”と‥‥
でも
お前は違った」
「え?」
「ハードルが高かったら低くすれば良いんや。
1番の底辺のハードルをお前は全力で飛んできた」
「え?あ、はい。え?あ、ああ〜うん、え??」
↑
褒められてるか馬鹿にされてるか分からんので最強にキョドる佐田さん
「あのテープのことや!観たで!」
そのことかえ!!過去程くだらない‥‥(涙)
「ああ、どうも」
「お前は心臓に毛生えとるわ!はっはっは!」
「ああ、ど〜も(涙)」
「お前が部下やったことが誇りに思う時がくるような気がするわ」
佐田さん、シカト
「‥‥一週間待つ、一週間経って何の変化もなかったらお前の名前を出すぞ、分かったな?佐田」
‥わーヽ(;▽;)ノ
「さ、さっきまでの優しさは!?」
「だって元はと言えばお前のせージャン!」
by.おっさん
「うぅ‥やるだけの事はやってみますよ‥」
「頑張れよ佐田。
一週間後、俺と牢屋で会うか
俺と二度と会うことはないかは
お前次第や」
警備官、
「時間です」
灰原、警察に立たされ、退出まで導かれる
「灰‥‥チーフ!」
灰原、振り返り
「黒木!“黒木豊”や!ここにはもう来るなよ!!」
佐田、向こう側に深くお辞儀をする
白馬、
「佐田さん、あの、俺って誰すか?(涙)」
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