『テープ』
リ[映画サークル](1/1)
同じく俺の部屋





そこに今2人の男が入室
…嗚〜呼、男かあ




「イカ臭っ」


こいつは俺の高校時代の“映画サークル”の後輩、赤井。童顔でまだ幼さ残る顔、いつも軽く、ヘラヘラしてるくせに時折でる自信タップリな発言が鼻につく。


「お邪魔します」


この見た目からして根暗は同じくサークルの後輩、黒木。趣味はAV収集、特技は映像、画像編集。こいつの作ったアイコラは絶品。らしい。まあ簡単な話、趣味も特技もオナニーな彼





「あ?何や?何か用か?寝たいんやけど俺」





「へっすんません、いや、こいつ、黒木がね…久々にサークル面子で集まりたいって電話が来まして」

と赤井



コクリ…と会釈する黒木


珍しいな…内気なこの黒木から集まりの誘いなんて


佐田は黒木を一瞥する
ボサボサの頭、何を考えてるのか分からないようなギョロリとした目
“Ayaka”と何者かのサイン(どうせ新人のAV女優のだ)が書かれたTシャツの袖からニョロっと出ている腺の細い腕。



「へえ…まあ久々やし、何か飲む?」



「あざーすッ!」
「有難う御座います」







2時間後…
良い具合に賑やかな現場。
といっても盛り上がる声は赤井と佐田の声のみ




「あ、そういや桃子は?」
「あーあいつは明日仕事早いらしくて」
「…へえ」



みんなそれなりに頑張っている…明日のために
俺には明日の仕事もない



「赤井はフリーターかあ」
「はい、そろそろ社員になるかどうかってとこっす」


…そういや、一応…
「…黒木は?今何してん?」





「何も、してません」


「ああ、そう…。あー赤井、お前さあ…」



そう、興味がない。
黒木、お前は何で来た?自分を見ているよう気がして…


「んで佐田さんはどうなんすかー映画監督への道はー?」



「うん、辞めたよ会社」


その佐田の発言に反応する黒木。しかしすぐ顔を逸らす。



「まじですか?たくっ、せっかく紹介してあげたのに…」と赤井

そう高校卒業間近、映画監督を馬鹿な夢を見て、赤井に今日まで働いていた映像会社を紹介してもらった
入社するまでAV制作の会社とは告げられなかった(騙された)



「まあほんとは俺が最初に紹介されたんですよ、こいつ、黒木に」

「えぇ!?」

初耳やん…!

「俺行く気なかったから佐田さんに紹介回しまして」

「は…はは…そうやったんか…でも、何で黒木が…?」

「こいつ父親が大手AV会社の社長なんですよ、“TPE”だっけ?そのコネで」




ショック!
俺はこんな奴のお父様の名の下で散々ゴミのような扱いを受けながら働かされてたのか?
泣きそう…


「でも最近TPEと契約した新人女優ってよく消えてますよね?何で黒木?」
「…さあ」と首を傾げる黒木




確かにな…
てか俺も消されたやん!
どうでもいいわ!





「つっても何かしら活動はしてんでしょ先輩」

TVと繋がったカメラを指差す赤井

「いや、これは」

すると黒木が急に四つん這いで動きだし、そのカメラを触りだす


「おい何してんねん!」

TVに映る映像、先程までのオカズ、今日の手漫栗子の濡れ場



「何すかこれ?」

急いでカメラの電源を切る佐田

「いやこれ、今日の仕事終わりにチーフがテープ抜くの忘れてて、編集マンもいなかったし持って返ってきた…」



「ははは、売りません?このテープ?マニアには高く売れますよ」


「だめだめ、来週の撮影の時に返さないと、辞表と一緒にさあ」



「おい黒木、売ってもらえば?筋金入りのAVマニア」
と赤井

黒木の不気味な目玉が佐田の方にギョロっと向く
死んでた目に一瞬、血が通ったように見える

ハッとビビる佐田
「あかんあかん!何考えとんねん!あほっ」


「冗談っすよ!ジョーダン!ほら飲みましょ飲みましょ」
と赤井がクシャっとした笑顔を見せる

チッと舌打ちする佐田
















朝、早朝
缶ビールに囲まれガーガー寝ている佐田と赤井

黒木はいない

黒木は姿を消した
カメラに差し込まれているはずのテープと共に




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