もしも"死神"だったら。


キオク ( 1/6 )








「 ところで龍崎くん、今日はどんな用事で此処に来たんだい 」

「 俺、お笑い芸人になったんです。こいつは相方で。プロフィール写真を基晴さんのところでお願いしたいと思いまして 」


お笑い芸人…この、なんもおもんない鍋嶋が?この無愛想な人と組んでんの?嘘やん。

私は心の中で叫んだ。


「 そうかそうか、そういうことなら爽、撮ってあげなさい 」

「 なんでそうなんねん! 」

「 私はもう歳だ。シャッターを切っても手が震えてしまって何も撮せない 」


もじぃは何故か嘘をついた。昨日も一緒に出掛けて百何枚か写真を撮ったのに。


「 爽は私のたった一人の弟子だ。きっといい写真を撮ってくれる 」


後になって、分かったこと。貴方がこの時、嘘をついた理由は最期にこの世に残していった私の実力を見るためだったのだと。


「 いのまた…って、まさか、あの死神の猪又!? 」


そしてなんでこいつはこのタイミングで思い出したのか。こいつ絶対ボケやろ。


「 何、ワケわからんことを言ってんねん。爽ちゃん、宜しくな 」


無愛想な人が再び素敵な笑顔を見せて私は胸が締め付けられる。






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