みんなのうた。ー彼らのうたー
歇双子。](1/6)
 
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「匠‥悠‥‥すまなかった。

壊れていくクリスを‥‥無力で愚かな俺は、どうすることもできなかったんだ‥‥」



全てを話し終えたおじさんが、ゆっくりと辛そうな声で呟いた。



「「‥‥」」


匠も悠も



「「「」」」


もちろん私たちも



誰も、何も言えなかった




「‥匠?
お前が1歳になった日に、お前をイギリスに預けたのは‥‥俺なんだ。

イギリスのクリスの両親の押しに負けて‥泣く泣く手放した。

バカな親父を‥‥許さなくていいからな‥‥」



「‥‥」


匠は、何も答えない



「クリスはな?
病気なんだよ‥‥

17年前からずっと。

‥‥情緒不安定で、いつ記憶がどうなるか分からない。

突然また‥‥

眠ったままの植物状態のようになってしまうかもしれない‥‥」



「‥‥」


悠も、何も答えない



するとおじさんは、泣き続けていたおばさんの頬を両手で包み込んだ。



「クリス‥‥?

君は苦しんだ。
充分頑張った。

‥‥だから、もうそろそろ解放してやろう?

悠と‥匠を、解放してやろう‥‥?」






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