みんなのうた。ー彼らのうたー
歇夜の海から](1/5)
 

まだ肌寒い夜の風が


フワリと2人の
顔を撫でる



掛ける言葉が見つからず


私はただただ

匠を見つめた




波の音が

やけにハッキリ聞こえて

夜の海が

私たち全てを

飲み込む気がした




どれくらいの時間が経ったのだろうか



私は

話せなかった




その静けさを

破ったのは匠




「‥あと1分‥」



ん? 何?

私は首を傾げる


けれど匠は、ふっと笑い




「‥乃愛?
お前はずっと、俺の光だから‥

乃愛だけは、そのままでいて‥」



壊れそうな程

繊細な笑顔でそう言って





「‥好きだよ」




私の唇に


触れるだけの
甘く優しいキスをした。




匠のキスは


いつも突然で


でも

キスされると

気付いた時には


匠のその澄んだ瞳に

心を

気持ちを


奪われる。





ゆっくりと離れる唇




「‥時間だ」




そう言うなり、匠はポケットから何かを取り出し




「‥腕、出して?」


私の腕に、その"何か"を付けた。




私はそれを見つめる



「うわぁ‥綺麗‥」



私の腕に付いていたのは、繊細で可愛いブレスレットだった



「‥今日はホワイトデーだろ?
乃愛に‥プレゼント」






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