伝えきれない想いがある。



愛してる





夜が更けて静まりかえった部屋には
自分のため息だけが響いていた。

不幸だからため息を
ついているわけじゃない。

俺には大切な人がいる、それも
大好きで大好きでたまらない人。

だからこそ不安になって

「何してる?」

こうして電話をしてしまうんだ。

「ん?どうしたの?」

電話越しに彼女の愛しい声が響いた。

本当は大好きでたまらなくて
お前が離れていくんじゃないかって不安で
だからこそ今お前にこの気持ち
伝えなきゃって思うのに……

「いや、ただ、暇で。」

たった一言「好き」が
どうしても言えない。
いつも、いつも。

こんな俺だから
気持ちを伝えることも
抱き締めることもできなくて
何度も喧嘩をしてきた。

その度お前は泣いて、
俺の気持ちを聞いてくる。

゛もうやだ、分かんない゛

そう何度も言われた。

でもその度、
゛大好き゛とお前は言う。

その度俺は思うんだ。
”愛してる”って。

こんな頼りなくて、
くそ野郎で、不器用な俺だけど
お前だけは失いたくないと
喧嘩するたび強く思うんだ。

この気持ちに偽りは1つもない。

だから、だから
今日こそちゃんと伝える。
そのための電話なんだ。


「あのさ」

「ん?」

「あのさー…」

「なに?」

「あ…」

「なによーどうしたの?」

「あ…あ明日、晴れるかな」




あー…また今日も…
愛してるが言えなくて
明日の天気なんか聞いてしまった。


でもそんなことを知らないお前は

「明日かー、テレビでは
くもりって言ってたけど。
てるてる坊主作ろうか!ね!」


なんて。
そんなとこが
俺は好きなんだな。


明日こそ、
明日なら、


毎日繰り返す
俺は馬鹿だ…



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