◇間章:変わらぬ誓い (1/48)
文久三年(1863年)
九月二十五日。
広大な屋敷にある離れの一室。
其処には、難しい顔で書状に目を通す一琉の姿があった。
目の前には書状の山々。些細な事から、舌打ちしたくなる程の仕事ばかりが積み上げられている。
書簡をまた一つ、運んできた密樹を見据え一琉は口を開いた。
「案件が、妙に増えてねえか?」
「先日の、壬生の一件やないですか。あれから何かと裏側(コッチ)は、騒々しいんで」
「……そうかよ」
一琉は小さく息を吐くと、手にしていた書状を畳へ放り投げた。
「ちょ、若さん!! 何してますん!!?」
朝廷や幕府から送られてきた書簡を、ぞんざいに扱う一琉に密樹は思わず声を上げる。
「煩い。何日も徹夜してんだ。ちったぁ休ませろ」
密樹の非難を物ともせず、一琉はその場に寝転んだ。積み上げられた書簡が崩れ、踏み潰してしまった気がするが、完全無視。
今はこの現状から目を逸らしたかった。
ふわぁと欠伸を掻き、ふて寝を決め込もうとする一琉に、密樹は困ったような表情を浮かべる。
「仕方ないやないですか。若さんが動かな、誰も動かへんのです」
「……はっ、他人任せが好きだしな。役人共は」
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