*恋慕う御方 (1/3)
小屋の中
ひびの入った木の間から僅かに射す光以外何もない暗闇……
其処が私の居場所です。
何もやることがなく、刻より母がご飯を無造作に置きにまいるその刻まで私は詩(うた)をうたったり唯一持っている粗末なくしで髪をといておりました。
ぎぃぃ-
鈍い音をたて 小屋にある小さな扉が開かれます…
この小屋には仕掛けがありまして、外からでなければ其れは開きません。
何度私が出してと叫ぼうと 嘆こうと……
爪をたてながら押しても…
古ぼけたこの小屋は意外に頑丈でした、
一体何年 私はこの小屋にとじ込まれているのか……
刻の事など 既に麻痺しています。
でも 今日は彼が来る日という事だけは何時もわかるのです。
なぜでしょう?
ねぇ貴方はお分かりですか
「沖田さん」
後ろから光が少しだけ除くのだけど、その光に背を向けて遮る彼…
そのまま自然な動作で扉を閉じてしまった。
だから私はまだ一度も貴方のお顔を見たことがないのですよ?
「屍悪(しお)さん久しぶりです、覚えていますか私の事」
「久し振り?あの日からあまりたってないように感じますよ沖田さん」
「ふふ、そうでしたね」
空気が小さく揺れて彼が笑ったのだと知りました。
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