隣人問題
☆[第四話](1/1)
6家協議
「では、私が話を進めましょう」
早速、中島清がそう切り出した。
「まず、今日お集まり戴いたのは先日の金田さんのゴミ出しの件についてですが、金田さん、お宅のご主人は一体なぜあんな出し方をしたのかね?」

金田喜久美は誰の顔を見る訳でもなく、視線をやや下に向けながら答えた。
「それは二階にあるゴミをいちいち下まで運ぶのが大変だからです」
「なるほど、しかし投げ捨てたんじゃあ日村さんに迷惑が掛かるんじゃないかな?」
「我が親愛なる主人のコントロールは非常に正確です。決して誤ることはありません」
「いや、そういう問題じゃなくて…」思わず口を挟んだ太郎を喜久美はキッと睨みつけると突然声を荒げた。
「何よ!?何の被害があったのよ!?アレがウチのやり方なのよ!いちいち他人のやる事に口を出さないでくれる!?」
一同は目を丸くした。

「ま、まぁゴミの出し方はひとまず置いて…金田さん、お宅は随分とゴミを溜め込んでるようですが?」引きつった笑顔で清は質問を続けた。
「それは開発に必要だからです」そう答える喜久美の言葉に、米元の目が鋭くなった。
「生ゴミ処理機か…」網代耕作が呟いた。
「そうです。我が偉大なる主人は現在、最高水準の科学技術を駆使して極めて精巧な生ゴミ処理機の開発に取り組んでいるのです」不気味な笑みを見せながら、喜久美は勝ち誇るようにそう言い放った。

何のこっちゃ??
太郎はこの理解不能なやり取りに、思わず向かいに座る南の夫・純四郎の顔を見た。太郎の視線に気付いた純四郎は、真剣な眼差しで太郎を見つめると、コクリと小さく頷いた。
何…?何の了解ですか!?わからない…俺がオカシイのだろうか?
軽くパニック状態に陥っている太郎の傍らで眞紀子は微かに笑みを浮かべ、太郎の耳元へそっと口を寄せると、
「南さんの奥さんの服、昨日スーパーで特売品だったやつよ」
と、小さく囁いた。

- 4 -

前n[*][#]次n
/10 n

⇒しおり挿入


⇒作品レビュー
⇒モバスペBook

[編集]

[←戻る]