隣人問題
☆[第三話](1/1)
中島さんと網代さん
「あなた、やっぱりアッチの服の方が良かったかしら?」
「どっちでもいーよ、ただ隣の家に行くだけだろ?」

町会長・米元の呼び掛けで、金田家についての話し合いが行われる事となった。場所は隣の中島宅。

中島家はかつてこの町内の大地主であった。今でも広い敷地を持ち、いくつかマンションを所有している。町内一の高さを誇る『チョモランマ中島』はこの家の自慢である。
「やぁ、いらっしゃい。どうぞどうぞ」中島の亭主・清の案内で太郎と眞紀子は部屋へ通された。既に米元と南夫妻、それに金田の妻・喜久美が席に着いている。
奥から中島の妻・万里が烏龍茶を運んでくると、眞紀子は「あら奥さん、どうもぉ」と実に愛想よく挨拶をした。眞紀子は以前、万里に動物園のお土産という事でパンダのぬいぐるみを貰ったようで、それからやけに仲が良いのである。
「あとは網代さんだな」そう米元が口にした。

中島家と同様に広い敷地を持つ網代家は、やはり日村家と隣接しており、言ってみれば日村家は中島家と網代家のちょうど隅の方に存在している。
網代の亭主・耕作は町内会の副会長をしているが、米元とはあまり折りが合わず、二人は露骨にライバル心を剥き出しにしていた。新しく観光名所が出来れば、町内からどっちが先にそこへ行くか常に競っている。その影響で、町内の誰もがこの二人より先に新名所へ行く事ができないでいる。

数分後、チャイムが鳴った。清は玄関へ向かい、網代夫妻を伴ってやってきた。
「これで揃いましたな」米元は部屋を見渡し、静かにそう言った。
かくして、太郎の気持ちとは裏腹に、6家協議が開催されようとしていた。

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