隣人問題
☆[第二話](1/1)
南さん
翌朝、出勤前の太郎に眞紀子が声を掛けた。
「あなた、昨日の話ちゃんと考えといてよ」
「明日土曜だから、俺が直接言いに行くよ。じゃあね」
そう言って家を出て、太郎は目の前の金田宅に目を遣り溜め息をついた。気の弱い彼にとって、こういう事は大の苦手なのである。

駅へ向かう路の途中、太郎は自分を呼ぶ声に気がついた。声の主は金田宅の隣に住む南だった。
「あ、おはようございます」
「日村さん、聞きました?」
「え?あぁ、金田さんの件?」
「やっぱり(笑)私も家内から聞かされましてね」
二人は話しながら歩き出した。
「そうだ、南さんと金田さんは従兄弟でしたね?南さんから上手く言っておいて貰えませんか?」
「従兄弟って言ってもねぇ、全然親戚付き合いしてないし、それに言って分かるようならあんな事しませんよ」
更に南は続けた。
「あの家、ゴミを溜め込んでるんですよねぇ…うち隣でしょ?臭いし虫は湧くし、コッチも迷惑してるんですよぉ。じゃあ私はここで」
バス停へ向かう南と別れた後、太郎はある事を思い出した。

休日、太郎は自宅前の清掃をしている。縁あって有名な職人が作った竹製のほうきを手に入れ愛用していた。
いつものように掃除をしていたある日、たまたま庭の手入れをしていた南に会った。竹ぼうきを見た南は甚くそれを褒めてくれ、太郎も気を良くしていた所、「あなた、電話よ」と眞紀子に呼ばれ、ほうきを塀に立掛け自宅へ入った。ほんの2〜3分だろう。電話を終え戻ってみると、竹ぼうきは無くなり、南の姿も無かった。

残業を終え帰宅し、玄関のドアを開けるや否や、眞紀子の「町会長さんがね、明日みんなで話し合おうって」の言葉に出迎えられた。
「みんな?みんなって誰?」
「ウチでしょ、南さんでしょ、あとウチの両隣の中島さんと網代さん。それと会長さんと当の金田さん」

嫌な予感が的中した…事が大きくなっている。
「ねぇ?」
「…何?」
「明日着ていく服、どっちが良いかしら?」


- 2 -

前n[*][#]次n
/10 n

⇒しおり挿入


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]