第二章[一歩](1/14)
昨日「涼太から逃げない!」と決意をしたけど……俺はさっそく逃げた。
俺が今居る場所は下駄箱。
時刻は8:20。
いつもより5分遅い。
皆さんは覚えているだろうか?
俺が冒頭で『涼太に会う為に毎日8:15に登校している』と言っていた事を…。
俺はそのチャンスを見す見す逃したのだ。
自己嫌悪に苛まれながら、俺は肩を落として自分の教室に向かった。
「優、おはよう!」
いつもと変わらない及川の元気な挨拶が飛び込んできた。
『…おはよう。』
「あら?元気ない!」
『及川……俺をダメ男だと罵ってくれ……』
「は!!??」
『俺さっそく涼太から逃げちゃったよ。』
「……何やってんのよ、このスットコドッコイ。」
及川は冷めた顔で俺を睨む。
『ホントに罵りやがった!
昨日の優しい及川はどこ行ったんだー!?』
おどけた俺を見て、及川が笑った。
『……よかった。』
「え?何が?」
『ちゃんと笑ってくれた。いつもの及川のままだ。』
「え?…」
『よく考えたら俺、昨日最低だったかなぁと思って…』
「へ?なんで?」
『だって…俺を好きだって言ってくれた奴に、自分の恋愛相談して……おまけに励ましてもらっちゃったし。』
「なに言ってんのよ!そんなの全然最低じゃないよ!」
『…でも………ごめんな?辛かったか?』
俺は、及川のいつもの強気で、明るい返事が返ってくると思ってた…
思ってたのに………
『及川……!?お前…』
「うるさい!見ないで!」
そう言って及川は涙を隠すように下を向いた。
及川が初めて見せた涙…
俺が流させた涙……
俺はやっぱり涼太から逃げちゃいけないんだ…
涼太の為にも
及川の為にも…。
『及川…俺、今度こそホントにちゃんとするから…。
ちゃんと涼太と話すから…。』
及川は下を向いたまま黙って頷いた。
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