[暴虐の焔](1/10)
「あれ?取調室とかそういうとこじゃないんですか?」
九条さんがまぬけな声を出す。
「いや、そりゃ君たちがあの彼女を殺したって言うなら、別々に取調室で話を聞くさ。でもあれはどう見ても自殺だからね。ちょっと発見した時の事情を聴きたいだけなんだ。ここで充分だろ?」
「なんだ。夕飯時だし、カツ丼奢ってもらえるかと思ったのに」
僕たちはS市中央警察署に来ていた。
取調べを受けるのかと思ってドキドキしていたけど、僕らが通されたのは2階にある大部屋の隅っこにある小さな応接スペースだった。
周囲では、せわしなく警察官たちが動き回っている。
「九条さん、あれって別に奢りじゃないらしいですよ」
「そりゃ警察が税金で奢ってくれるはずないけど、刑事さんがポケットマネーで奢ってくれるもんじゃないのか?」
「ちょっと君たち、保護者の許可取ってるといっても、あんまり遅く帰すわけにいかないんだからね。無駄話しないでちゃんと協力してくれよ」
聴取担当はどう見ても20代の、かなり若そうな刑事だった。
名前は田所(たどころ)というらしい。
ちゃんと犯罪者の相手が務まるんだろうか。
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