◆[アメカゼ](1/1)
――冷んやり、と
冬になると、必ず喉が痛む。
愛用の加湿器1号が、頑張って部屋中に蒸気を充満させているのに。
2号だって、机の上でモクモクさせてる。
それでも痛むこの喉に、あたしは飴が手放せない。
サクマドロップを常備して、30分置きに缶を振る。
いちいちゴミの出ないこのコは有能だ。
『あなたの風邪はどこから?――ベンザブロック♪』
…喉からです。
そろそろ頼る頃か〜?
あんまり君には頼りたくないんだけどなぁ。
依存しちゃいそう。
「おいおいテレビは消せよ受験生」
あたしの悩みは、もう1つ。
あ、しがない受験生ってこと入れたらもう2つ、だった。
有悟くんが、冷たい。
手も出してこない。
付き合って2ヶ月。
普通もっとらぶらぶしてて、もうキスくらいは済んでてもよくない?
受験より難関だよ。
この人を突破するのは。
…今だって。
「家庭教師して」と銘打って、連れ込んでみたのに。
質問するまで放ったらかしで、ベッドで漫画読んでる。
あたしの少女漫画。
「俺は乙女ゴコロ勉強しとくわ」
とか言っちゃって。
しろ。あたしより頑張って勉強しろ。
……うそ、かまって。
なんで2人っきりなのにそんななの?
なんでキスもしてくれないの?
1つや2つ、してみてよ。
その漫画の主人公だってねぇ、あたしと同じ15だよ。
ちゅっちゅちゅっちゅしてるでしょ?
…あー、喉が痛い。
サクマサクマ。
「げ」
薄荷だよ。
もう薄荷しかないよ。
「有悟くん、飴いる?」
「いらね」
…あっそ。いいよ食べるよ。
これしかないもん。
「また薄荷だろ?」
スースーする。
心もね。冷んやり、と。
「うん。不味い」
「お前にはまだ早いんだよ」
…どうせね。子供だもん。
有悟くんとの6歳差っての差し引いたって、お子ちゃまだもん。
薄荷なんか嫌いだもん。
色気なんてないもん。
…ムラムラしろ、ちょっとくらい。
「里奈、いいもんやろっか」
「えっ!?なぁに!?」
「ほい」
机に置かれた、いちごみるく飴。
「ふふ、ありがと」
うん。嬉しい。
好きだよ有悟くん。
あたしの好きなの覚えててくれるトコ。
大好き。
だからまぁいっか。
「食わねぇの?」
ベロに乗せたヤツを見せる。
「もうちょっとなの」
有悟くんの甘いご褒美は、もうちょっと我慢するよ。
「もらってやろっか」
え
カラン
「風邪も薄荷もね」
……ね、有悟くん。
あと3つ、薄荷があるの。
fin.
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