先輩の姿 (1/18)
いよいよ定期演奏会当日を迎えた
朝から湖野市民会館へ行き、疲れない程度に午前午後でリハーサルと確認作業を行う
忙しくしているうちに、開演まであと30分となった
楽屋で髪を整えたり、配られたおにぎりを食べたりする部員たちには緊張の色が見える
あたしはいつものサイドテールを二つ結びにしてみた
何となく、変えてみたい気分だったのである
大抵の女子は派手にならない程度で、髪型にも気合いを入れる
「冴羅ちゃん可愛いー!いつもそうしてればいいのに」
唯先輩が三つ編みをほどきながら言った
彼女も今日は髪を左サイドにまとめて三つ編みにするらしい
「今日だけですよ〜」
「もったいなーい」
すると、楽屋のドアが開いた
そして、ユーフォニウムを持った瑠美先輩が顔を覗かせる
「そろそろ舞台裏でチューニングするよ〜。急いでね」
早くもそんな時間らしく、急いで楽器を持って階段を降りる
麻里乃は普段と変わらないヘアスタイルだったが、少しワックスで整えていた
「さえ、頑張ろうね!」
背後から肩を叩いてきた早百合に対し、あたしは「うん!」と力強く返事した