思わぬ出会い (1/20)
(んー……こんな感じ?)
S県湖野市のとある一軒家の部屋の鏡には、真新しい紺のブレザーに深緑のネクタイと深緑のチェックのスカートを身に着け、髪をサイドテールにした少女が映っている
あたしは紅野 冴羅、15歳
珍しい名前だが、由来はフランス語から来ているらしい
何でも、「サエラ」はフランス語で「あちらこちら」という意味だそうだ
なぜそんな名前をあたしに付けたのかは未だ分からない
純粋な日本人で、ハーフではない
ちなみに、湖野高校普通科の1年生になったばかりだ
どうしてもここに入りたくて、高倍率の難関を突破した
昨日入学式を終え、今日から本格的に高校生活が始まる
(さてと。今何時だっけ…?)
ベッドの近くに置いてある目覚まし時計を見ると、針は7時55分を指していた
(やばっ!待ち合わせに遅れちゃう!!)
階段を駆け下りて朝食を済ませ、弁当を持って玄関に突進する
「いっ、行ってきま〜すっ!!」
「行ってらっしゃーい」
外はまだ少し肌寒く感じるが、土手道にある桜は満開だ
道端のつくしや、たんぽぽも咲き始めている
そんな道をあたしは自転車で駆け抜けていった