WHITE WOLF
[慈雨の降る](1/19)
 止まぬ雨が、大地を洗い流す。そこに残された夥しい数の死体と目が合う度に、シャイアは悲痛の表情を浮かべる。
「下見るな、シャイア」
そんな彼の肩を、キールは優しく叩く。
「折角の死装束も、そんな顔してたら格好良さ半減だろ」
キールの言葉に、シャイアは不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「う……うるさいなぁ。ファルコン大佐が僕のために作っておいてくれたんだ。亡き人の功労を笑うなんて不謹慎だよ」
彼が身に纏っていたのは、白狼の民族衣装仕様の戦闘服だった。詰め襟で前後の裾は長くなっている。
「あんたこそ、ソイルアークの軍服、似合わなすぎて笑えないよ」
「はいはい、お喋りも大概にしろよな。……上客のお出ましだ……」

 二人の視線の先に、多数の人影が見える。徐々に近付くそれらは、まるで死人のように茂みの中を揺めいていた。
「どうやってさばくつもりだ?あの数だし、俺は丸腰だぜ?」
「銃か何か借りて来ればよかったじゃん、要領悪いなぁ」
「わかってんだろ?弾丸なんか、気休めでしかないって」
キッとキールを睨むシャイアだったが、すぐに視線を茂みの方へと戻し、鎗を握り直す。

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