WHITE WOLF
[託された矛](1/18)
 澄み渡った青空、そう呼ぶのに相応しい晴天に覆われたベルテロイカの街を流れる小川は、平生と何ら変わりのない風景を写し出していた。
 長きに渡る戦乱の世の中を、どの国にも支配されることなく生き延びてきた大国。強大な軍事力を保持しながらも、進んでこれを行使しようとはせず、経済の発展に力を注いできたからこその豊かさなのかもしれない。

 他国では見られない穏やかな風景に、アルスは思わず惚けてしまう。
「ここがベルテロイカ……初めて来ました」
「そうだったのか。俺はちょくちょく……まあ、大した用事じゃ無ぇんだけどな」
慌てて視線を逸すギアを不審に思いながらも、アルスは長々と続く石畳に足をとられないように前を見据える。
「軍本部があんのは……ほら、見えるだろ?あそこの建物だ」
ギアの指差す先には、巨大なコンクリートの建物が見える。
「軍事力を一切行使しない割には、たいそうな設備ですね」
「まぁ、これから共に戦う仲間だと思えば、心強いことこの上ないんだがな」
眉間に皺を寄せながら、呟くように話す彼を横目に、アルスも小さく溜息をついた。

「いきなり行って、はいそうですかって協力してくれる訳ないですよね、やっぱり……」

- 485 -

前n[*][#]次n
/547 n

⇒はさむ


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]