ドジっ子キューピッド
キューピッド (1/8)
恋焦がれていた早峰に、黒い感情を抱くようになったのは最近だった。
早峰は、クラスのムードメーカー。
特に顔が良いわけでもないが、運動神経抜群で、親しみやすさから女子の人気も高かった。
私は苗字が根本で、ずっと席が前後だった。
いつも早峰とは喧嘩ばかりだ。早峰は私をブスと罵り、私はそれに対して怒る。
そんな関係が心地よかった。
喧嘩しつつも、好きっていう、ありがちな恋をしていた。
高校二年になって十月に差し掛かった頃、早峰が告白されている現場を目撃するまでは。
「……良かったじゃん。可愛い子に告白されて」
「な、なんだよ見てたのかよ」
1年生で可愛いと評判だった栞ちゃんに告白され、鼻の下をだらしなく伸ばしていた早峰を茶化す。
「今時階段下に呼び出して告白なんて、古風な子だね」
「……うっせーな、なんなんだよクソブス」
「べっつにー?あの子もよくこんなクソ男に告白したなあって思って」
自分の素直じゃない性格は、かなり損だと思う。いつも余計なことを口走ってしまうから。
「誰にも告白されたことねー奴が、ピーピー言うんじゃねえよ」
「うるさいわね!」
「お前みたいな豚ゴリラ、誰も好きになんねーだろうな」
「さいってい!!死ね!」
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