友達というカテゴリー


◆手 (1/1)

限界,そして…





それから何日も私は


ずっと殻の中に居続けた。


暗闇の中ずっと……



心配した親がご飯をドアの前に置いている。


一日の時間の感覚が日の光を感じないせいか,もうわからなくなっていた。



もう目も枯れてしまった。


部屋の中は私一人。


今まで生きてきた自分そっくりになった。





【もう…限界だよ……】





限界が近づいた時


私は目をゆっくり閉じた。



真っ暗で何も見えない。


周りを見渡しても暗闇が続いているだけ。


その中で


私は力無いまま歩いた。





しばらく前に進むと欝すらと光が見える。



そして


私の目の前に





[私自身が立っていた。]





目の前の私が口を開けてなにかを話している。


でも聞こえない。


必死に


必死に


何かを伝えようとしている。





そして


目の前の私は右手で指をさす。



私に何を伝えたいの?



私の方を指さし


その手を開いて


手を差しのべた。



何もわからないまま立っているのでさえ限界な私は,その手をとった。





「優奈!優奈ーー!!!」





誰かが呼んでる……





「優奈!!目を覚まして!!!」





遠くから叫ぶ声が


とても心地よく感じる。


優しい声……





「優奈……。そんな…お願い……。」





目の前の私はいつの間にか消えて


つないだ手が暗闇の空に上がっていく。



大きな海の中から飛び出す様に


暗闇から


真っ白な世界に変わった。











目を覚ますと


そこは病院だった。



パパやママがいる。


誰かが手を繋いでくれてる。



目をその手に向けると


そこには


友梨がいた。



涙を流しながら


強く


強く


とても強く私の手を握ってる。



それを見た私は


自然と涙が溢れていた。





友梨「優奈……良かった。本当に良かった……。」





その瞬間


幼い二人の幻影を思いだす。





人と人とのつながり


それがこの手にすべて答えがあった。


友梨は昔からずっと私を見ていた。


あとから出会う友達より


私自身を


私の心を見てくれていたんだ。





優奈「ご…ごめん…ね……。」





涙が言葉になって弱々しく零れ落ちた。



動けない私を



友梨は強く



強く



抱きしめてくれた。





その時


思い出したんだ。


昔の二人を……





…………………………………………………





友梨「私,友梨!よろしくね。」


優奈「私は…優奈。」


友梨「優奈ちゃんね。じゃあ今日から友達だね!」





手を出す友梨……





優奈「……うん。」





その手を自然につなぐ私。





…………………………………………………





病院の個室にいる今の二人を見た時



私の中の



友達というカテゴリーが壊れ



スタート地点へと戻った。





今では言える……


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