親という名の子


▼離婚 (1/1)




私の手は



こんなにも汚れてしまった。



誰にも気づかれずに



自分の事すら手遅れになってたなんて……





一瞬で世界が変わってしまった。



何もかも。





こんなに寂しい気持ちはないよ。



私は,もう一人ぼっちなんだ。



いや……そうじゃない。





ずっと前から





私は一人だったんだ。





…………………………………………………





彼の手に印鑑が見えたとき



なんでこんなことになったかを自分自身に問い詰めていた。



孝 「これで……いいね。」


里奈「………。」



結ばれて四年が経つのに,結局こういう形でしか答えが出なかった事で何か無機質な感情が自然と溢れていた。



孝 「最後まで……こうなんだね。」


里奈「………。」


孝 「こうなるのはわかってたはずだろ?」



そうかもしれない。



孝 「親権は里奈に譲るから。」



ただ貴方は自分が優先なんでしょ?



孝 「君の望んでる様にした。」



答えなんて出ていたんだよね。



孝 「だから……これで終わりだよ。」





里奈「さよなら。」



強がるほど私には何も残っていないのに


自然と口から零れ落ちた言葉。



でも


もう引き返せない……





…………………………………………………





あの離婚という経験を初めてして


あれから私と娘の二人の生活がスタートした。



四歳の娘は毎日保育園に通い


私は大型モールの食品売り場で慣れない仕事をしている。


友達も結婚をしてから音信不通になって


母子家庭で必死に育ててくれた母親も私が若い頃にガンで亡くなり


二人だけの生活を毎日送る私の中で


自分の感情が少しずつ変化を起こしていった。





【何が幸せで……】



【何が理想なのか……】





誰か教えてほしい。



こんなこと



私は望んでないのに。










そして


私は就職して一年経っても仕事場ではまだミスも多く,周囲からいつも嫌な顔をされている。


それでも負けずに頑張って働いている私。


自分を否定しないために。





里奈「すみません。」


店長「すみませんじゃなくて…困るんですよね。」


里奈「………。」


店長「計算,合ってないでしょ?何回言ってるんですか!!こんなにおぼえが悪い人,初めてだよ!!」


里奈「……すみません。」


店長「あのね〜こんなんが続いていると本当にクビになりますよ?冗談じゃなくて。」


里奈「………。」





生活の為。



なのにこんなに苦しい。



本当にそうなのかな?





仕事はいつも5時に終わり,娘を車で保育園に迎えに行くのが日課。


離婚をしてから,このサイクルがずっと続いている。


これがずっと続くのだろうか?


いつも変わらない人生に,私は何故かイライラしてしまう自分がいる。



保育士「こんにちわ〜!」


里奈 「希……。」


保育士「のぞみちゃんですね。少しお待ち下さい。」


里奈 「………。」



希が泣きながら保育園の先生に連れて来られる。


離婚をしてから,ほとんど変わらない光景。


赤ちゃんの頃から私が子育てを一人でやってきた。


育児ノイローゼに苦しみながら必死に育てたのに。


最近はずっとこの調子で迎えに来る時はいつも泣いている。



保育士「ちょっと寂しかったみたいですね。ね〜,のぞみちゃん。」


里奈 「すみません…。」



謝るのが癖になっている自分が嫌い。


いつの間にか『すみません』が代名詞の様にいつも私の口から出ていく。


そんなに謝らないといけないのかさえ疑問に感じず。


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