◆変化する心 (1/1)
生きてほしいと願う
それを見て,僕も自然と涙が出ていた。
言わなくてもわかる。
僕には…
花火の光が
少しずつ…
少しずつ…
小さくなっていく。
[光が消えた…]
その瞬間,今までうっすら見えていた海も彼女も見えなくなるぐらい真っ暗になった。
拓 「死ぬと…こんな感じなのかな。何もなくなって…すべて消えてしまって。僕も…麻衣も。」
麻衣「………。」
拓 「思ったんだ…。この一周間,ずっと麻衣とメールや会って話したりして…。麻衣は,死んだりしちゃいけない人なんだって…。」
麻衣「えっ…。」
拓 「麻衣には…死んでほしくない。」
麻衣「なんで…なんでそんな事言うの?」
拓 「死ぬのは…僕だけでいい。」
真っ暗の闇の中で,心の底からそう思った。
僕は間違っていたのかもしれない。
いや,きっと認めたくなかったんだ。
自分が弱い人間だということを…
何故か,彼女を見ているとそう思えた。
浜辺から戻った僕たちは,車に乗りこんだ。
海風で体が冷えきって,彼女が寒そうに震えている。
僕は,そっと手をつないだ。
拓 「なんで,人って生きるんだろう…。」
麻衣「……。」
拓 「なんで生きていけるのかな。」
麻衣「わからない…。でも,結局…一人では生きていけないんだよ。」
拓 「……。」
車内から綺麗な星空が見える。
麻衣「あの星みたいに…人ってつながっていて…たとえ死んでいたとしても…光続けてつながってる…何かを伝えようとしてる。」
拓 「星か…。」
麻衣「ちょっと聞いていい?」
拓 「…うん。」
麻衣「さっきさ,私は死んだらいけないって言ったよね。何で…?」
拓 「……。」
麻衣「……。」
拓 「今日,麻衣に出会ってさ…。いや,出会う前は,ちゃんと二人で死のうと思ってた。」
麻衣「……。」
拓 「でも,麻衣と今日会って…僕の勝手な考えで麻衣まで一緒に道連れにしていいのかなって思ったんだ。」
麻衣「だって,私は…。」
拓 「知ってる。麻衣が辛くて…死にたいって事も。でも違うんだ。」
麻衣「違う?」
拓 「そう…僕は麻衣と出会って気づいたんだ。」
麻衣「……。」
拓 「麻衣に優しい言葉と抱きしめられたとき,僕の中で…なんかこう…うまく説明できないんだけど…。」
麻衣「……。」
拓 「救われたというか…気づかされたというか。なにを言ってるかわかんないけど…。」
麻衣「……。」
拓 「どんなに弱い人間でも,どんなにダメな奴でも…どんなに辛い人生の人でも…死んでいい人間なんていないんだって。」
麻衣「……。」
拓 「死ぬ命もあれば,ちょっとしたキッカケで救える命もあるんだって…。」
麻衣「私にはわからないよ…。」
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