◆最期の日の出発 (1/1)
7日目…ついに出会う二人。
麻衣「そうだね。」
拓 「車で迎えに行くから,また場所を後で教えてね。」
麻衣「うん…わかった。」
拓 「最期の日は,したいこと…行きたいところに行って…。」
麻衣「そうだね。拓くんは,怖くない?」
拓 「…死ぬこと?」
麻衣「うん。」
拓 「…少しだけ怖いかも。」
麻衣「正直なんだね(笑)実は,私も強がってて本当は怖いんだぁ〜。」
拓 「………。」
麻衣「でも,生きたいとも思わない。だって辛いから…。」
拓 「…うん。僕もだよ。」
麻衣「なんでだろうね。」
拓 「何でかな…。」
麻衣「こんなのひどいよ。きっと,神様なんていない…。弱い人間は,救われない人間は…ほったらかしだもん。」
拓 「僕も,よく思ったよ。」
麻衣「私が…いったい何をしたっていうの?何か悪いことしたの?」
拓 「麻衣は何も悪くないよ。悪くない…。」
麻衣「死ぬしかないなんて…。」
本当は,誰だって自分の存在を消すのは怖い。彼女の気持ちは,本当は死にたくないんだ。でも,今の彼女には死ぬことでしか救われない。
それしか選べる道がないから。
お互いの詳しい理由なんて知らない。
自分自身のことは一番自分が知っている。
僕たちみたいな人は他人に自分のことを知られるのがすごく怖いんだ。
けど,仮面をかぶって生きていける人がうらやましいとも思わない。
ただ,この世界に馴染めない…この苦しみに耐えられない自分が嫌なんだ。
普通の人からみれば単なるわがままだなんて言うかもしれない。
強い人間もいれば弱い人間だっている。
うまくいく人間だっていれば,うまくいかない人間だっている。
ずっと我慢していれば何かいいことがあるなんて誰が言ったんだ。
苦しんで死んでいった人間はたくさんいるのに…
それは全部大人が考えたエゴだよ。
死ぬことがダメだなんて簡単に言うけど
僕たちにとっては
それが最期の手段なんだ。
[最期の日]
お互いの近い駅の場所で待ち合わせした僕たちは,車を走らせた。
初めて会う二人だったけど,違和感がなかった。
自殺をしようとしているからなのかな…。
とりあえず,行く場所は決めずに車を走らせた。
麻衣「ちょっと聞いていい?」
拓 「いいよ。」
麻衣「拓くんって…本当の名前?」
拓 「うん,そうだよ。麻衣は?本当の名前??」
麻衣「う〜ん…秘密。」
拓 「そっか。」
麻衣「興味ない?」
拓 「そんなことないけど…。」
麻衣「そうだよね。」
拓 「………。」
麻衣「あっ!コンビニによってもらっていい?」
拓 「う,うん…いいよ。どうしたの?」
麻衣「買いたいものがあるんだよね(笑)」
拓 「わかった。」
急遽,コンビニによることになった。
僕は彼女が何を買ってくるのか気になって仕方なかった。
こんな日に何を買うんだろうって…。
でも,買ったものを見せられたとき…笑ってしまったんだ。
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