『 稀代 』
[壺の中の約束](2/13)




俺たちは、顔を合わせるたびに、こんな感じの会話をする。今では、軽ーい挨拶みたいなものだと認識して貰って構わない。





「で、要件はなんですか?」






壹井さんは、「ああ、そうそう。今回の依頼人だ。」と言って、隣りで、居心地の悪そうに座っている青年の肩に手を乗せた。





「どちら様です?」






そう聞くと、青年は、宮沢 一馬(みやざわ かずま)と名乗った。どこにでもいそうな、取り立てて珍しくも無い青年だ。歳は、18歳くらいだろうか?






「どうも、俺は…か、」






「こいつは、快(かい)。俺の助手ってところだ。わりーな。こいつ、愛想悪いだろ?目つきも悪いし、態度もデカイ。しかも、遅刻とタダ食いの常習犯。ったく、少しは使える奴だったらマシなんだけどよ〜」






俺の言葉を遮った上に、とんでもない悪口を並べられ、俺はプツンと糸が切れた。同時に、もともと常備していないやる気も更に失せた。



愛想が悪い、目付きが悪い、態度がでかい、それは、まだいい。だけど、最後の「使えねー」発言はどうにも納得がいかない。





「じゃあ、愛想が良くて、目つきも悪くない、謙虚で使える助手を雇ったらどうです?俺は、今回の件、降ります」





 「あ、ちょっと待てよ!快!まだ、依頼内容聞いてねーだろ!」






「興味ありませんし。」





「待てよ、もしかしたら、お前が探してる情報と何か関係あるかもしれねーぞ。いいのか?聞かなくて」





店を出る寸前に、壹井が言った言葉に俺は立ち止まる。いつも、最後はこの言葉で丸め込まれていることに、俺は腹が立って仕方ない。









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