『 稀代 』
[壺の中の約束](1/13)





「遅せーよ。もうコーヒー3杯目だ。野糞でも、してきたんじゃねーだろうな!」




「あなたじゃないんだから、するわけないでしょ」





商店街を抜けた左手には、取り壊しの決まっている古びた集合団地と、遊具の少ない錆びれた公園。更に奥に進むと、立ち入り禁止区域の看板が掲げられた建設途中のビルがある。



待ち合わせ場所は、そのすぐ隣りにある「壺の間」と言う店だ。年中「Close」と掲げられているのに、どうして何十年も潰れずに済んでいるのかずっと不思議だった。まあ、今となってはその存在理由も、存在価値も、理解できる。



所謂、俺や壹井(いちい)さんみたいな、境界線の向こう側、もしくは、ちょうどその境界線のど真ん中にいる人間だけが必要とする場所ってこと。





「いらっしゃい、快くん、アイスでいい?」




「あ、はい。」




カウンターの席に着くと、マスターはアイスコーヒーをさっと出してくれた。マスターと壹井さんは、随分と長い付き合いらしい。温厚で余計な事を言わないマスターだからこそ、あんな傍若無人な壹井さんとも上手く付き合っていけるのだろう。





「ったく、毎回毎回、遅刻すんな。しかも、少しは申し訳なさそーな顔くらいしやがれ!」




「そんな顔した所で、壹井さんが納得するとは到底思えませんけど」



「こっのっ!クソガキ!」




「まあまあ、壹井君も落ちついて。快くんも、あまり怒らせるようなことは言っちゃダメですよっ。」



「気をつけます」










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