グッド騎士(リメイク前)
第四話[助ける](1/12)
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ウェインライト城の地下。
自害しようとするミリアを、マリア達はなんとか説得した。
「でも、それでは僕の気が済みません・・・。僕に消毒させて下さい!」
ミリアは王女の肩を掴んで唇を近付ける。
そんな彼を押し退けたのはプライゼだった。
「いやいや、俺様が消毒する!」
そう言って今度はプライゼがマリアの唇を狙う。
「遊んでる場合じゃないだろう!」
メーテルは彼らの頭を殴って止めた。
王女はくすくす笑う。
幼なじみも側近も、冗談でやっているのだと思ったから。
本人達は本気だったのだが。
「で、ミリアとラグレイン・・・二人だけか? 王は?」
メーテルが辺りを見回して言う。
ここには二人だけが捕まっていたようだ。
では、マリアの父親、ファウストはどこにいるのだろう?
「お父様は見てないよ」
ラグレインが言った。
「でも、もう他に牢屋なんてないわ」
マリアがそう言うと、沈黙が流れる。
嫌な考えが浮かんでしまった。
もう既に、処刑されてしまったのだろうか?
「これはこれは皆さんお揃いで」
誰かがやってきた。
マリア達は警戒する。
現れたのはメフィストフェレスだった。
そしてもう一人、彼の後ろに金髪碧眼の男がいる。
年は二十代前半くらいか。
肌が白く、病弱に見えるが、美しい顔立ちをした美青年だ。
「お父様!」
「ファウスト様・・・」
「陛下!」
マリア、メーテル、ラグレイン、ミリアの声が揃う。
「えーっと・・・お父様って、マリアちゃんの?」
「そうよ」
プライゼはまさかと思ってマリアに尋ねたが、彼女は頷いた。
プライゼにとって、初めて見るウェインライト王。
しかし、どう見てもマリアの父親は、二十代にしか見えない。
メーテルは勿論、自分やミリアより若く見えた。
マリアの父親、本名ヨハン・ウェインライト。
旧姓はファウスト。
彼は今年で四十一歳だ。
ウェインライトの王女だったマリアの母親と、十七の時に結婚した。
そしてその翌年、ヨハンが十八の時にマリアは生まれる。
確かに父親としては若いが、彼の顔は四十過ぎた顔ではない。
ヨハンは元は博士であった。
十七で天才博士と言われていたファウスト博士は、ウェインライト王になった今も、旧姓で呼ばれている。
彼は様々なことを研究して成功をおさめたが、彼が一番力を入れていたのが「不老不死」の研究だ。
彼が不老不死の研究を成功させたかどうかは、まだ何も発表されていない。
だが、彼のまだ若く美しい顔を見れば、結果はおそらく成功したのだろう。
「お父様、無事だったのね。・・・ところでその人は?」
マリアはちらりと父の側にいる男を見た。
「ああ・・・マリアはメフィストが初めてだったね。
この人は父様の友人のメフィストだよ。マリアの隣にいる、そう、メーテル君の兄君だ」
ファウストは友人を紹介する。
驚くマリア。
彼女はメーテルと幼なじみだったのに、兄の存在を全く知らなかったのだ。
ヴォルフィードに何度か泊まったが、メフィストを見るのは初めてだった。
メーテルもプライゼも、もう一人兄がいるなんて、今まで一言も口にしたことが無かったはずだ。
「お兄さんがいたなんて、私知らなかったわ。どうして教えてくれなかったの?」
マリアは幼なじみ二人に尋ねる。
メーテルは何も答えない。
「メフィストはディアの連れ子なんだ。つまり、俺達の父さん・・・先代の皇帝と結婚する前の子供で、俺達とは異父兄弟。皇帝の子供じゃないから王族にはなれなかった。だから皇子でもなんでもないし・・・それに、こいつ超性格悪いから、俺もアニキも大嫌いなんだよ」
プライゼは説明した。
彼らが存在を教えなかったということは、よっぽど嫌っているのだろう。
そんなにも性格が悪いのだろうか?
マリアはメフィストの顔をもう一度見た。
しかし外見だけでは、彼の内面はわからなかった。
「マリア、気を付けろ。メフィストは母上に絶対の忠誠を誓ってる」
メーテルはメフィストを睨む。
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