グッド騎士(リメイク前)
第一話[結婚式](1/11)
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「ねえ、神父さん」


早朝の教会。

朝の日差しが降り注ぎ、すがすがしい雰囲気の中で、マリアは薔薇の花束を手にしながら、神父と話をしていた。

彼女の金色の髪が、光にあたってまぶしい。


「神様も恋をしたりするのかな?」


今日はマリアの結婚式。

マリアはこの国、ウェインライトの王女だ。

だから今日の結婚式は、大勢の人が教会に集う、盛大な結婚式になるだろう。

幼なじみ、『北の皇帝』との結婚。

マリアはこの日が来るのをずっと待っていた。

式まで待ちきれない彼女は、朝早く教会へ向かい、ブーケを自分で取りに来たのだった。

胸の中が幸福でいっぱいのマリアは、神父に質問をした。

恋は幸せ、だと考えている彼女は、神もそんな幸せを持っているか気になったのだ。


「ええ・・・もちろんですとも。神だけではありません。天使も・・・堕天使も・・・」



神父は笑顔で答える。

しかし、その笑顔はどこか怪しい。


「堕天使?」


マリアは今までに聞いたことのない単語を神父から聞いた。

神父は「堕天使」とは一体何かを説明しようと口を開くが、突然の来訪者に邪魔されてしまう。


「姫様ーーっ」


ミリアだ。

彼はこの国の将軍で、王女の側近でもある。

ミリアは十七年前に、マリアの父親であるこの国の王、ファウストに拾われた。

記憶喪失だった彼は、自分のことを何一つ覚えていなかったが、優れた剣術で騎士になり、今では将軍の位にいる。

ミリアという名は、王がつけたもので、本名ではない。

唯一の手がかりは、ウェインライト人特有の金髪と青い瞳を持っていることだ。


「こんな所にいらしたんですか、探しましたよ、もう」


息をきらしながら彼はマリアの元へかけよる。


「ごめんね、ミリア。今日の式のためのブーケを取りに来たら、神父さんとすっかり話し込んじゃって・・・あのね、今日の式を担当する神父さんよ」


マリアは謝り、そして神父を紹介した。


「・・・ルシアと申します」


ルシアと名乗った神父は小さくお辞儀をする。

ミリアは神父を見て驚いた。

神父のイメージと、実際目の前にいる神父が違うからだ。

神父は年老いた白髪の男だと思っていた。

しかし、実際目の前にいる神父は年若い、美青年だったのだ。

神父は蛇のような瞳をしていて、色は血のように赤い。

髪の色も、瞳同様、赤い髪をしている。


魔族だろうか?

様々な種族が住むこの世界に魔族は珍しくない。

魔族とは、「魔力を持つ人間」のことで、普通の人間より少しだけ寿命が長く、色白な美形が多い。

この世界で魔術を唱えられるのは魔族とエルフ、天使だけである。

因みに、マリアの婚約者である『北の皇帝』は、北の魔族の国ヴォルフィードの皇帝。

魔族の王だ。

ミリアはあからさまに嫌な顔をする。

彼は大の美形嫌いで、ルシア神父をこころよく思わなかった。

彼は歪んだ笑顔のまま、神父と握手をする。


「ほう、なんというか、聖職者に全く見えませんねー。どちらかというと人間に化けた魔物?」


「ミ・・・ミリア!」


ミリアの失礼な態度にマリアは困惑する。


「あ、僕、この国の将軍、ミリアです。はじめまして」


ミリアは神父の手を握る力を強くした。

そして神父だけに聞こえるよう、耳元で囁く。


「姫様に馴れ馴れしく話しかけんじゃねえぞ、この赤毛」


「・・・は、はあ・・・」


彼がこんな事を言うのは、マリアに好意を持っているからだ。

神父はミリアの本性に恐れをなしたのか、王女から少し距離をとった。


「へえ、綺麗なブーケですね」


ミリアはマリアが持つ白い薔薇のブーケに目が止まる。


「皇帝がこの花、用意してくれたんだって。私、薔薇大好きだから嬉しいな」


他の男が用意した花だと思うと、ミリアは複雑な気持ちだったが、王女の嬉しそうな顔を見ると、そんなことはどうでもよくなった。


「さ、早く着替えましょう姫様。時間に遅れてしまいますよ」

「そうね」


マリアは側近に促され、教会を出ようとした。

ふと足を止め、最後にもう一度神父の顔を見る。


「ねえ神父さん、私、幸せな結婚生活をおくれるかしら?」


マリアは再び質問をした。


「さあ? あなた次第ですよ」


神父はそう答えた。

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