グッド騎士(リメイク前)
第十一話[水龍の湖](1/11)
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「そういえばレイナは、最近まで倭国にいたんだよな?」
メーテルが思い出したように言った。
「はい。六歳から十二歳まで倭国で暮らし、倭国の文化を学びました」
「えっ、ずっと王子と暮らしてたわけじゃなかったの?」
マリアは驚く。
六年も親と離れて暮らしていたとは。
「俺、倭国が好きでさあ。だから娘の名前も倭人っぽくしたんだ。因みにレイナの名前には漢字があって、『麗しい命』って書いて麗命って書くんだ。
昔、倭国で舞を観に行ったことがあって、そっから倭国の虜! すんげえ綺麗だったんだよな・・・レイナにも、舞を覚えさせたくって倭国へ修行に行かせたんだ」
プライゼがそんなに倭国が好きだったなんて・・・マリアは初耳だった。
「じゃあレイナちゃんは舞を踊れるのね?」
「い、一応。まだまだ未熟ですが・・・」
レイナは謙遜しているのか、あまり自信なさそうに答える。
娘の舞は素晴らしいと言うプライゼだったが、それに対してレイナは「自分の娘だから下手でも上手に見えるんですよ」と言って否定した。
マリアは彼女の舞が見てみたいと思った。
「倭国ではどんな人達とどんな風に暮らしていたの?」
倭国には行ったことがないマリア。
一体どのような暮らしをしていたのだろうと、気になって尋ねる。
「人達って言っても、私は舞の先生と二人暮らしだったんです。倭国一番の先生で、舞だけじゃなくて、華道や茶道も教えてくれました」
マリアは厳しそうなお婆さんを想像した。
「素晴らしい先生です。でも、たまにお尻とか触ってきて・・・」
「・・・え」
「セクハラじゃねえかよ」
厳しそうなお婆さんから、変態オヤジへとイメージが変わった。
「あ、でも、先生のおかげで、痴漢撃退法とか身につけましたよ」
「へえー・・・そりゃあ是非挨拶しねえと」
プライゼは笑顔で言ったが、目は笑っていない。
「お、男の人なんだ・・・」
「はい。確か、今年で二十六歳で・・・髪は長くて・・・まあ静かにしていれば、儚げな雰囲気を持ってる人ですよ」
そうやって先生のことを紹介するレイナは、どこか楽しそうだ。
もしかして、レイナはその先生に、恋をしているのではないだろうか?
女の感でマリアが思う。
・・・いや、それはないか。
相手はレイナより一回りも年上。
レイナが初めて先生と出会ったのが六歳なら、相手は十九歳だ。
・・・しかし、まだ幼い少女の尻を触るとは・・・先生という人は一体どんな男なんだ?
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