グッド騎士(リメイク前)
第九話[一人目のグッド騎士](1/12)
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「皆様、お目覚めでしたか」
ヘルベルトは感情の無い声で言った。
「ヒアラ・・・お前、私達をヴォルフィードに売ったのか・・・!」
メフィスト・フェレスがいるということは、ヒアラはヴォルフィードの味方をしているということだ。
メーテルは彼女を憎悪剥き出しの目で見た。
「二人は私に『借り』を返しただけだ。そんなに睨むんじゃない」
不気味な笑みを浮かべながら、メフィストはメーテルに近寄る。
「借り? 借りって何だ?」
メーテルはメフィストとなるべく目を合わせないようにして、尋ねた。
「二人に鉄の処女を与えたのは私だ。これは私の自信作・・・この中に入れば何本もの釘が体中を刺し、体内に流れる血をほとんど流し取ることが出来る。エコでしょう?」
部屋のすみに積まれている死体は、鉄の処女で殺された者達の亡骸だろうか?
「何でそんな・・・ヒアラがどうして鉄の処女を求めるんだ?」
「私達は吸血鬼だからだ」
ヒアラの代わりにヘルベルトが答えた。
「十五年前・・・私の故郷、吸血鬼の村は、マーベリックの教団の奴等に滅ぼされた。私の同胞は皆死んで、私一人だけが助かった。孤独に森をさ迷っていたら、お嬢様と出会った・・・」
マーベリックといえばプライゼの国だが、十五年前といえばプライゼはまだ十三歳。
プライゼは直接関係の無い話だ。
そして吸血鬼の村を滅ぼせと命じた当時の法王も、七年前に亡くなっている。
「お嬢様は私を救ってくれた命の恩人だ。お嬢様は餓死しそうだった私に、自らの血を与えて下さった。帰る場所を無くした私を雇ってくれた・・・」
「それで・・・ヒアラは吸血鬼になったのか」
吸血鬼に血を吸われた者は吸血鬼になる。
ヒアラはヘルベルトの血族になったようだ。
「そう、そうだよな・・・! 普通吸血鬼に血を吸われたら吸血鬼になる。なのに何で他の被害者は皆死んでるんだ?」
プライゼは今更矛盾に気が付く。
「血族を増やす為には、少量の血液だけ吸えばいい。多くの血液を奪うと、その者は亡くなってしまう」
再びヘルベルトが答えた。
「この世界で生きている吸血鬼は私とお嬢様、二人だけ・・・私は魅力的に思った。それに血族を無駄に増やしても、教団にまた狙われるだけ・・・」
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