グッド騎士(リメイク前)
第八話[ハテルダという女性](1/11)
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不意に雷の音がなった。
雨が降っていることに、マリア達は今更気が付く。
雷は、かなり大きな音だった。
近くに落ちたのだろう。
そして、屋敷内の明かりが消えた。
停電だ。
マリアは怖くなって、蛇をぎゅっと抱き締める。
「あらあら、困ったわね。皆さん、ここで待っていて頂戴。私とヘルベルトは蝋燭を探してくるわ」
そう言ってヒアラとヘルベルトは食堂から消えていった。
「こんなに暗くて、あんま見えねえのに、よく蝋燭なんか探せるよな」
暗闇の中でプライゼが言う。
マリア達は、暗闇の中で雑談をしながら、ヒアラ達が帰ってくるのを待った。
二人が蝋燭を持って帰ってきたのは、それから十分程だった。
「困ったわ。今ブレーカーを見に行ったんだけど、どうやっても電気が戻らなくて・・・どっかの電線が雷でやられちゃったのかしら? 業者を呼ぼうにも、電話は出来ないし・・・」
プライゼがポケットから携帯電話を取り出す。
「あー・・・こっちも駄目だ。圏外だ」
キィ、キィと音を立てて、ヘルベルトがワゴンをひいてきた。
その上には人数分の蝋燭が不気味に立っている。
「停電に、電話が通じないなんて・・・まるでホラー映画みたいね」
「そんな…怖いこというなよ…」
マリアの言葉に反応したのはメーテル。
どうやら彼も怖がりのようだ。
「アニキ、まさか今もおばけが怖いのか? アハハ、可愛いとこあんじゃん」
プライゼが馬鹿にしたようにケラケラ笑う。
犬猿の仲である兄(本当の兄弟かどうかは定かではないが)の弱点を知れたのが、よっぽど嬉しかったのだ。
「…で、この雨はいつあがるんだ?」
弟の挑発を無視し、大人の態度を取った兄。
というより、言い返すよりも恐怖のほうが勝った。
こんな不気味な屋敷から早く出たい。
今後の天気を、今自分を馬鹿にしたばかりの弟に聞いた。
新聞を持っているのはプライゼだから。
「え? ああ…ちょっと待って」
プライゼはヘルベルトから蝋燭を貰って、新聞の天気予報欄を見た。
「うーん…明日の昼まで、だな。今夜は嵐だそうだ」
「本当に言ってるのか?!」
自分を怖がらせるために嘘をついているのかもしれない、とメーテルは疑った。
「本当だって!」
信じない兄に、プライゼは新聞を投げわたす。
メーテルも蝋燭を貰って、天気予報欄を見たが、嘘ではなかった。
「どうするの? 明日まで雨で、今夜は嵐って…」
マリアは不安げにプライゼに尋ねる。
「どうするってったって…今日はもう吸血鬼探しどころじゃないだろ? …ヒアラ嬢、すまねえけど、今夜はここに泊めてくれねえか?」
メーテルは明らかに嫌そうな顔をしたが、それに気付いていないヒアラは嬉しそうに頷いた。
「ええ! 勿論構わないわ!! 食事が終わったら、私とヘルベルトで部屋の準備をするから…」
そう言ってヒアラは席に戻り、食べるスピードを少し早めた。
「レイナもそれでいいか?」
「はい…嵐ならば仕方ありません…」
全員が屋敷に泊まることに同意した。
メーテルは内心、嫌がっていたが。
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