グッド騎士(リメイク前)
第七話[古びた屋敷](1/11)
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豪華なテーブルとソファー。
廊下はあんなに埃まみれだったのに、この屋敷の居間は綺麗だ。

ルシファーはソファーに座る「白い女性」の手をとって握る。


「勝手にお屋敷に入ってしまった我々をお許し下さい・・・ああ、でもなんて可憐なお嬢様。私はあなたと出会う為に、このお屋敷に誘いこまれたのでしょう」


ルシファーは色気たっぷりの目で女を見た。
ミリアがそんな彼の頭を殴る。


「お前は誰に対してでもそうなのかっ!」


女はくすくすと笑った。
この女性は屋敷のお嬢様。
歳は十代半ばくらいに見える。
青い瞳は大きく、まつげはぱっちりとしていて長い。
綺麗な銀髪の髪は、胸元までの長さ。
肌は陶器のように白く、まるで人形のような可愛らしさを持つ。
名前はヒアラというらしい。


「こういうロリ可愛い子は好みなんだ。巨乳なお姉さんも好きだけど。っていうか顔が良ければ・・・」


話を最後まで聞かずに、ミリアはもう一度殴った。


「ありがとうございました」


マリアが居間にやって来る。
今までトイレに行っていたのだ。


「すごく助かりました」
「姫様!」


ミリアはすぐに彼女の元へ駆け寄る。


「それで、何であの男が姫様の側にいるんですか?!」
「早速聞いてきたわね・・・」
「気になりますから」

律儀な側近に、マリアは苦笑した。
ミリアを部屋の端まで引っ張って、ルシファーに聞かれないように、耳打ちする。
それが全く意味の無い行動だったなんて、マリアは知らなかった。
天使の耳は人間とは違って特別に良いのだ。


「何故私の所に来たのかは知らないけど、彼、急に現れたの」


服を作って貰ったことも話す。


「彼、悪い人じゃないわ。だって、夜なべして服を作ってくれたんだもの」
「姫様・・・本気でいってるんですか?」


呆れるミリア。


「彼はヴォルフィードの味方をして、ウェインライトを滅ぼしたんですよ?!」


美貌というのは、最大の武器だと彼は思った。
マリアはルシファーの美しさに誤魔化されている。


「私だってちゃんと考えてるわ! あの人、凄く強いのよ! 見ていてわかるわ。だから、ペットにすれば監視できると思ったのよ」


そう言っても、ミリアの表情は変わらない。


「ペットねえ・・・どちらがペットになるのやら・・・」


王女に対して、かなり失礼な言葉だったが、本音を抑えることが出来なかった。

「逆に、彼が敵のスパイだったらどうするのですか? 今はメーテル様も指名手配にされています。メーテル様の命にも関わることなんですよ?」


と、ミリア。
マリアは今にも泣きそうな顔を見せる。
確かにそうだ。
自分一人の命だけならまだしも・・・皆の危険にもなる。
ルシファーを信用するには、まだ日も浅い。


「ごめんなさいミリア、私そこまで考えてなかったわ。でも、ペットになってって・・・彼に言ってしまったの」


ミリアはため息をついた。
プライド高そうな彼が、ペットになることを拒否しなかっただなんて・・・ますます怪しい。
彼がスパイだという可能性は高くなった。


「姫様、こうなってしまったら仕方がありません。いいですか? あの蛇がルシファーだったことは、皆さんに後で言いましょう。勿論彼がいない時に」


蛇を始末するかどうかは、皆と相談したほうがいい、とミリアは考える。


「そうしたらルシファーはどうなってしまうの? まさか・・・」


察したマリアが不安になって尋ねた。


「いやよ、言わないで! 彼、殺されちゃう!」


ミリアは驚きを隠せない。
こんなに言っているのに、まだルシファーを心配するのか。





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