真野ちゃん法度。
雪合戦のチーム分けは平等にするべし。(1/16)
うちの事務所に、小さな女の子が居て。
天くんと絵本を読んだり、航大くんと絵を描いたり。
ザイルさんとぬいぐるみで遊んだり、原口さんとおままごとをしたりしてるんだけど。
どれもすぐに飽きてしまって、結局最終的には逢坂さんの膝の上に座って。
逢坂さんが、その子の頭を撫でて幸せそうに笑っていた。
…そんな夢を見た。
** **
――11月30日。
「なんか今日、すごく寒くない?こんな寒い日に依頼に行くなんて嫌だわ…」
「本当ですね…。雪でも降りそうな感じです」
「雪降ったら皆で雪合戦しよーぜ。大将は俺ね。俺と原口さんとザイルさんがフォワード。航ちゃんと真野ちゃんがバックス。んでー、もういっこのチームの大将は蒼くん。フォワードも蒼くん。バックスも蒼くん」
「おいてめぇ。俺のチーム全部蒼くんじゃねぇか。何で俺が大将兼フォワード兼バックスなんだよ」
「あ、バレた」
「バレたじゃねぇよ。朝からふざけたこと言ってんじゃねぇバカ」
「喧嘩はダメ!!俺が蒼のチームに入ってやるから!!朝からそんなに怖い顔するな!!」
「いや…あんたは天のチームに行け。ザイルだけこっちに寄越してくれりゃそれでいい」
「何でだ!!どうして俺を蒼チームにしてくれない!!」
「もう。朝からうるさいわね…。声が大きいのよ。…航大くん行きましょ」
「はいっ!!…それじゃあ、行ってきます♪」
「おう!!気を付けてな!!」
依頼に向かう私と航大くんを、ブンブンと両手を振って見送ってくれる原口さん。
「おい、真野」
「何?」
「…着てけ。さみぃから」
そう言って、逢坂さんが私のコートを顎で指している。
「大丈夫よ。車なんだし」
「いーから着てけ。言うこと聞けよ」
「はいはい。わかったわよ」
渋々コートを着る私を見て、「過保護だな、副長」とザイルさんが鼻で笑う。
ザイルさんを少し睨み付けてから「気ぃつけて」って、逢坂さんが言う。
原口さんは声が大きくて、天くんは相変わらず眠たそうで。
ザイルさんは悟りを開いているみたいな感じだし、航大くんは朝から爽やか。
そして、逢坂さんは心配性。
原口オフィスは、今日もいつもと何も変わらない。
** **
数時間後、私と航大くんが事務所に戻ったら、逢坂さんと天くんが居なかった。
「逢坂さんと天くんは?どこに行ったの?」
私がそう聞いても、原口さんもザイルさんも、何も答えずに下を向いているだけ。
「…ちょっと。聞いてるの?原口さん」
俯いたままの原口さんの顔を覗き込んで、何かがあったことはすぐに理解出来た。
…原口さんが、泣いていたから。
この人は、普段からよく泣く人なんだけど…。
泣き方がいつもと違ったから。
…こんなに静かに涙を流す原口さん、見たことない。
「局長…?副長と隊長は…どこに行ったんですか?」
航大くんも、原口さんの様子がいつもと違うことに気付いたんだと思う。
心配そうに、原口さんに駆け寄る。
「…蒼と天は…病院に行った」
「………病院?どこの病院?何しに行ったの?何があったの?」
「…荒木総合病院に行った。………湊が…」
「え?…何?聞こえないわよ。ちゃんと言って」
「湊が………蒼の兄貴が………死んだ」
………。
………何?
…朝はあんなに、皆楽しそうに笑っていたのに。あんなに事務所が騒がしかったのに。
この数時間の間に、何が起きたのよ。
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➣しおり挿入
*Tenn's story*
ねーねーなっちゃん。
続編ではありませんが「真野ちゃん法度。」のその後のお話になります。
真野ちゃんを読んでいなくてもわかるようにはしていますが、読んだ後の方が楽しんで頂けるかと思います。
*既婚者♀(年上)×独身♂(年下)*
Lily.
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