真野ちゃん法度。
感謝の気持ちを大事にするべし。(1/19)
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すんすん。すんすん。
…すんすん。すんすん。
「…ちょっと…!!何なのよさっきからすんすんすんすんうるさいわね。人の匂い嗅ぐのやめてくれる?何?」
天くんがさっきから、すんすんと私の匂いを嗅いでいる。
「やー…なんか…真野ちゃんの匂い、どっかで嗅いだことあんなーと思って」
「はぁ?」
「…真野ちゃんがいつも付けてる香水と違う匂いな気がすんだよねー。匂うなー。…なんだっけこの匂い。どこで嗅いだんだっけこの匂い」
すんすん。すんすん。
「…だから鬱陶しいのよ。ちょっと…誰かどうにかしてよ…この犬みたいなの」
「…臭うな」
深刻な顔でそう呟くのは、ザイルさん。
こちらはこちらで、何か臭っているらしい。
「何がですか?」
「…小泉さんだ。さっきから見ているが、ため息ばかり吐いている」
「ため息?」
「俺が見たところでは、もう既に23回は吐いている」
「え?そんな細かい部分を見てるんですか!?ていうか数えてるんですか?…なんかザイルさんって探偵みたいですよね!!気配を消して、瞬きもせずにじーっと観察しているところとか、探偵みたいなんですけど!!」
「昔、少しだけ探偵事務所のバイトをしていたことがある」
「え!?そうなんですか?だから張り込み姿もサマになってるんですね!!かっこいいなぁ…。新選組でいうと監察方みたいな感じだ…!!」
「まじで!!ザイルさん探偵だったの?ちょーかっけー!!俺、将来の夢、探偵だった!!すっげーじゃんザイルさん。………つーか、待て待て。ザイルさんがつけてるその腕時計ってさ…まさかのまさかの…腕時計型麻酔銃じゃね!?」
「………俺の話はいい」
「うわ…これぜってー麻酔銃じゃん。ザイルさんやべーな…」
天くんはザイルさんの腕時計に興味津々で。
航大くんは、「かっこいいなぁ、ザイルさん」と興奮気味。
…というか、ザイルさん?それ、ただの腕時計よね?…そうであってほしい。
否定も肯定もしない真顔のザイルさんを見ていると、本当に麻酔銃に思えてくるから怖い。
「…つーかさー、どーすんの?やるって言ったはいーけど、さっきからなんもしてなくねー?ただコンビニ見てるだけじゃんか」
…そうなのよ。
昨日、勢いで皆で頑張ろうみたいなことを言ってしまった私。
でも実際のところ、何をどうしたらいいのかわからないし、計画も練っていない。
とりあえず、見切り発車で小泉さんが働くコンビニに来てみたものの、さっきから特に何もせずに喋っているだけ。
…ザイルさんは一応、ため息の回数を数えたりしているみたいだけど。
まずいわ。
言い出した私が、何したらいいかわかりませんなんて…言えない。
もしそんなことを言ったら、天くんとか天くんとか天くんが、鬼の首を取ったように突っ込んでくるに決まってるわ。
逢坂さんは「行かねぇ」と言って来てくれないし…私1人でどうすればいいのよ…。
逢坂さんが居ないと、頭脳が足りないし、指揮を執る人が居なくて困る。
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➣しおり挿入
*Tenn's story*
ねーねーなっちゃん。
続編ではありませんが「真野ちゃん法度。」のその後のお話になります。
真野ちゃんを読んでいなくてもわかるようにはしていますが、読んだ後の方が楽しんで頂けるかと思います。
*既婚者♀(年上)×独身♂(年下)*
Lily.
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