真野ちゃん法度。




チューチュートレインは列でやるべし。(1/13)


――逢坂さんと手を繋いで歩く。



デートは中止になってしまったけれど、私はもう、充分満足している。





じーーーっ。






「ゴミすげーな。ったく…ポイポイ捨てやがって。仕方ねぇ。拾うか」


「そうね」





じーーーっ。





名残惜しそうに私の手を離した逢坂さんは、地面に放置されるゴミを拾い始める。

私も、逢坂さんの隣に腰を下ろしてゴミを拾う。





じーーーっ。





…というか。

さっきからすごく気になっていることが1つあるんだけど。





じーーーっ。





――見られている。

気のせいかと思ったけど、絶対に気のせいじゃないわ。

明らかに私と逢坂さんをじーーーっと見ている。

腕組みをして木に寄り掛かっている男が、私と逢坂さんを見ている。





色が黒くて短髪で、髭を生やしていて、いかつい男。

日焼けしすぎじゃないの?あれ。…ギラギラしているんだけど。

なんか…アレみたいだ。





――…そう。アレだわ。



まるで、EXILEの中にいそうな風貌だわ。



何、あの人。誰なの、あの人。

じろじろ見すぎじゃない?

ガン飛ばしてるわけ?



チラチラと様子を伺っていると、なんと、ザイルさんと目が合ってしまう。



………まずいわ。目が合ってしまったわ。



合ってしまった目を慌てて逸らして、ゴミ拾いをしている振りをすると、何故なのかザイルさんがこちらに近付いてくる。





え?

どうして近付いてくるのよ。



「…逢坂さん?なんか、ザイルさんがこっちに…」


「は?」


「いや、だから…ザイルさんがどんどんこっちに…」


「何言ってんだおまえ。頭大丈夫か?」



ゴミ拾いに集中している逢坂さんは、まともに取り合ってくれない。

というか、焼きそば屋さんに煙草注文しちゃう人に「頭大丈夫か?」とか言われたくないわね。



ついに私たちの目の前まで、ザイルさんが来てしまった。



すると、何を思ったのかザイルさんは、逢坂さんに丁寧に頭を下げて。





「逢坂副長」





とか言い始める。

…逢坂さんの知り合い?

というか、逢坂副長って…。ザイルさん、うちの社員なの?





「あ?」と、かったるそうに顔を上げる逢坂さん。

そんな逢坂さんに、ザイルさんは続ける。



「…原口局長から伝言を預かっている。祭りの時間も残り僅かだ。少しでも2人きりで祭りを楽しんで来いとのこと。…ゴミ拾いは俺が引き受ける。副長たちは祭りを楽しんできてくれ」



そのEXILE的なワイルドな見た目とは裏腹に、礼儀正しい口調で用件を伝えてくるザイルさん。

…原口さんの知り合い?



「………ご苦労。あとは任せた」



スッと立ち上がり「行くぞ、真野」と、私を置いて歩き始める逢坂さん。





え?

逢坂さんもザイルさんのこと知ってるの?

というか、ゴミ拾い任せちゃっていいの?



誰なの?あの人。

誰なの?あの新しい登場人物。

誰なの?あのザイルさん。



もう、頭の中がハテナマークだらけなんですけど。





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まえ[*] つぎ[#]
しおり挿入





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*Tenn's story*
ねーねーなっちゃん。
続編ではありませんが「真野ちゃん法度。」のその後のお話になります。
真野ちゃんを読んでいなくてもわかるようにはしていますが、読んだ後の方が楽しんで頂けるかと思います。




*既婚者♀(年上)×独身♂(年下)*
Lily.


⇒作品レビュー
⇒モバスペBook

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